文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2018-01-01から1年間の記事一覧

No. 214 第9章: 心的領域論(その7)

ゴーギャンの描く南海の孤島に生きる人々には、不思議な魅力を感じます。そして、その理由が、分かったような気がするのです。鍵は、ユングにあった。心理学者のユングと画家のゴーギャン。この2人には、共通点がある。ちなみに、ゴーギャンはユングよりも28…

No. 213 第9章: 心的領域論(その6)

6.ゴーギャン フランス人の画家のゴーギャン(Paul Gauguin, 1848-1903)が、どうも私の家に住み着いてしまったような、そんな気分です。当初は軽い気持ちで、ゴーギャンについて記載してみるつもりだったのですが、彼の作品や人生と向き合っているうちに…

No. 212 第9章: 心的領域論(その5)

5.閉鎖系の世界へ 分析心理学のユングは、アメリカのニューメキシコ州でプエブロ・インディアンに出会った。そこでユングは、初めて白人ではない人と話す機会を得たと述べている。(参考:ユング自伝2 ヤッフェ編 河合隼雄訳 みすず書房 1973)そして、イ…

No. 211 第9章: 心的領域論(その4)

4.環世界 「環世界」というのは、元々は生物学上の用語だと思われますが、文化人類学においても使用されることがあります。正確な定義はちょっと分かりませんが、概ね「特定の人間や人間集団の認識が及ぶ範囲の世界」という意味だと思います。 例えば、幼…

No. 210 第9章: 心的領域論(その3)

3.人生スゴロク ネットで、こんな話を読んだことがあります。ゴルフ三昧の生活が夢だったAさんは、定年退職を機にゴルフ場の近くに転居し、永年夢見ていた生活を始めた。ところが、半年もするとゴルフをするのが苦痛になってしまった。一方、Bさんの夢は釣…

No. 209 第9章: 心的領域論(その2)

引き続き、前回の原稿に添付致しました「文化とメンタリティの関係図」に基づき、検討してみます。 まず、芸術と各領域の関係は、次のようになっています。 身体系・・・音楽想像系・・・文学物質系・・・美術 やはり、競争系の芸術というものは、存在しない…

No. 208 第9章: 心的領域論(その1)

1.概略 経験がメンタリティを生み、メンタリティが文化を誕生させる。すると、メンタリティというものは目に見えないけれども、人間の行動や文化的遺産などを観察することによって、その特質を推し測ることが可能である。そして、文化に5つの領域があるの…

No. 207 第8章: 単一系の文化と複合系の文化

先日、YouTubeでアフリカの画像を見たのですが、これには驚きました。道端に100人位の人々が集まって、輪になっている。正面には数人の男たちが座っていて、ジャンベなどの打楽器を打ち鳴らしている。輪の中心は直径10メートル位の空白地帯になっていて、そ…

No. 206 第7章: 想像系

1.アニミズム まだ、文字を持つ前の人々には、分からないことだらけだった。例えば、地震、雷鳴、台風、日照りなどの自然現象が何故、起こるのか。それどころか、何故、一日には昼と夜があるのか。1年には何故、夏と冬があるのか。そして、人は何故死ぬの…

No. 205 第6章: 物質系

1.機能 私たちの生活の主たる部分は、“物”を利用することによって、成り立っています。物の機能を引き出す。食物などは、その代表例だと思います。肉や魚が持っている栄養分を、私たちは食べることによって吸収している。そして、物に機能を付与する。ボー…

No. 204 第5章: 身体系(その2)

3.打楽器とリズム 前回の原稿を書いた頃から、すっかり“和太鼓”に魅せられてしまいました。どうやら、和太鼓というのは、大木の幹をくり抜いて作るらしい。そして、牛皮を貼る。だから、金属が醸し出す硬質な音とは違って、深みのある優しい音が生まれる。…

No. 203 第5章: 身体系(その1)

1.“身体系”文化の起源 身体系の文化は、動物を真似る所から始まった。この点は、多分、間違いないと思います。今回調べてみて、祇園だとか浅草には鳥のサギの格好をして踊るという風習のあることが分かりました。動物の姿を真似て着飾る。動物の動きを真似…

No. 202 第4章: 競争系(その2)

“競争系”のメンタリティと、“競争系”が生み出す社会的な現象について、もう少し分解してみたいと思います。 3.恐怖型 人間は、他の動物よりも、強い恐怖心を持っていると言われています。秦の始皇帝が万里の長城を作らせたのも、恐怖心に原因がありました…

No. 201 第4章: 競争系(その1)

1.競争系とは何か 現代日本に生きる私たちは、子供の頃から徹底して“競争系”のメンタリティを叩きこまれます。例えば、小学校の運動会でさえ、赤組と白組に分かれ、若しくはクラス対抗などの名目で、競い合うことになります。そして、学期末にはテストがあ…

No. 200  第3章: 記号系

1.記号の定義 記号とは何かと言うと、それは重大な哲学上の問題であり、例えばパースは記号を66種類のクラスに分類したそうです。ここではそこまで厳密に考える必要はないので、簡単に、次のように定義しておきましょう。 記号の定義・・・記号とは、音、…

No. 199 第2章: 文化を育んだ歴史的な背景

私たち人類と、人類が育んできた文化には、とても長い歴史があります。そのため、文化を育む基本的な原理があるとすれば、それはとても強固なものであることになります。他方、私たちの目に止まる文化の表層は、急速に変化している。従って、何が不変の原理…

No. 198 第1章: 文化が誕生するプロセス

まず、ある架空の事例を提示させていただきます。場所は日本で、時期は大昔という設定です。 ある日、山奥に住んでいる少年が、川沿いの小道を歩いていた。すると、バシャという水音が聞こえる。音に気付いた少年は、何だろうと訝しく思う。魚が跳ねたのかも…

No. 197 文化領域論 目次

2018年6月 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 196 目 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 197 第1章: 文化が誕生するプロセス ・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 198 1.記…

No. 196 文化領域論 はじめに

記号学のパース(Charles Sanders Pierce, 1839 - 1914)は、仮説と発見の論理としてのアブダクションについて、次のように説明している。 まず、驚くべき事実が観察される。 しかし、もしある仮説が真実だったとしたら、かかる事実は当然の事柄である。 よ…

No. 195 集団幻想という考え方

ある日、イワム族の村長が「我々の祖先はバナナである」と発言しました。今後もこの村長について言及することがあれば、「バナナ村長」と呼ぶことにします。 思えば上記村長の発言も、仮説だと思うのです。では、この仮説はその後、どのような道筋を辿ったの…

初夏の昼間のひとり言

パース先生によれば、アブダクションにはいくつかの仮説を思いつくままに提起する“示唆的な段階”と、それらの仮説の中からもっとも正しいと思われる仮説を選ぶ“熟慮的な推論の段階”がある。このブログは明らかに“示唆的な段階”にある。しかし、そろそろジグ…

No. 194 パースのアブダクション

このブログを続けてお読みいただいている方には、既にパース(Charles Sanders Peirce 1839-1914)はお馴染みの登場人物となっているかも知れません。No. 164とNo. 165において「記号学のパースが面白い」という原稿を掲載させていただきました。また、その…

No. 193 この素晴らしき世界

YouTubeを立ち上げて国会中継の音声を聞きながら、パソコンの画面上では将棋を指す。これが私の暇つぶし方法だったのですが、野党が審議を拒否し、ゴールデンウィークに突入してしまいました。すなわち、国会中継がなくなってしまった。そして、将棋だけでは…

No. 192 想像から思考へ

YouTubeの動物動画を見ておりますと、現在においても、人間と動物の新たな出会いは、絶えず続いていることが分かります。典型的なパターンとしては、生まれたての動物が生命の危機に晒される。そして、人間がその動物を助ける、というものです。例えば、小鳥…

No. 191 懐かしい場所

いつの頃からか、近所のラーメン屋でパートをしている“おばさん”と言葉を交わすようになりました。ほとんどの場合、私は客で彼女はラーメン屋の店員として、二言三言会話を交わすのです。街ですれ違った折には、挨拶だけ。 1か月程前のことですが、お店のカ…

No. 190 ”共感力”という考え方

相変わらず、政治や行政の世界では理不尽な出来事が続いています。私などは、腹が立って仕方がありません。一つ言えるのは、財務省では“内部統制システム”が機能していない、ということです。また、組織のトップに立っている人間のレベルがあまりに低い。あ…

No. 189 自然と結ぶ力

今回の原稿も話が飛びそうなので、一番言いたいことを最初に記しておきます。石には、私たちの心と自然を結びつける力がある。そして、その力は私たちの心を癒す。 昔、チャーリー・ワッツ(ローリング・ストーンズのドラマー)が面白いことを言っていました…

石と文化

前回の記事に添付致しました写真についてですが、金剛峯寺のHPを確認した所、同じような写真が掲載されていました。やはり、これは高野山の金剛峯寺における庭園ということで、間違いなさそうです。 それにしても、いかがでしょうか。そこには、物と自然に関…

論理性と怒り

今、怒っている日本国民というのは、かなり多いのではないでしょうか。言うまでもありません。政治と行政の問題です。 本日も国会中継があり、私も見ておりましたが、事態の解明は一向に進みません。森友や加計の問題については、既にご存知のことと思います…

トップの責任

自衛隊のイラク日報の存在が確認され、財務省が森友学園側に口裏合わせの依頼をしていたとのNHK報道もありました。もう、官僚の不祥事については枚挙にいとまがありません。この国は、いつからそんな2流国になってしまったのか。 当然の流れとして、トップの…