文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2021-12-01から1ヶ月間の記事一覧

救済としての芸術(その8) エピローグ

森友学園事件。時の総理大臣を守るために、財務省は公文書を改ざんすることにした。改ざん作業を命じられた赤木俊夫さんは、良心の呵責に苛まれ、精神のバランスを崩し、自殺した。夫の死の真相を知りたいと願った妻、赤木雅子さんは国を相手取って、1億700…

救済としての芸術(その7) 個人の時代

「真善美」というのは、ソクラテスが言った言葉らしい。この言葉を少し、私なりに解釈してみたい。 「真」とか真理というのは、「全ての人々が幸福になる方法」のことだ、と私は考えている。そうしてみると、これは人間社会の秩序に関わることだと言える。次…

救済としての芸術(その6) 芸術の力

人は、その人生を文化領域の中から始める。家族がいて、生活がある。そこに留まる人生もある。専業主婦や、1次産業従事者、職人の方々は、文化領域の中で暮らしている。例えば、私の知っているある寿司屋の大将は、小さな漁師町で生まれた。高校を卒業すると…

救済としての芸術(その5) 消え去る「知」

秩序の構造について、もう一度、整理してみよう。 まず、文字が生まれた。文字が「知」を作り出す。「知」とは、文明に影響を及ぼす何らかの思想や理念、若しくは知恵のことだ。「知」は、それを知っている者と知らない者との間に差異を作り出す。知っている…

救済としての芸術(その4) エクリチュールを巡る闘争

最も古い文学は、無文字社会において口頭で伝承された民話や童話だろう。そこには動物たちに対する愛情や、素朴な人々の暮らしが描かれている。そこに権力の匂いは存在しない。何故かと思う訳だが、無文字社会においては、権力そのものが存在していなかった…