文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2023-01-01から1年間の記事一覧

無為の人

どうやら私は、ウクライナ戦争が始まってから、憂鬱な気分に覆われているのだ。そして、イスラエルによるパレスチナへの侵攻が続いた。これはもう、ジェノサイドと言う他はない。パレスチナの人々は狭いガザ地区に閉じ込められていて、そこへイスラエルから…

虚脱感と共に過ごす日々

大分涼しくなってきたが、一向に意欲というものが湧いて来ない。ということは、私の“ヤル気”が消失した原因は、夏バテではなかったのである。前回、原稿をアップしてから、早くも1か月が経過してしまった。私の精神状態が危機に瀕しているのかという問題は別…

構造と自由(その12) まとめ

前回の原稿をアップしてから、3週間以上が経過してしまった。その間、私の思考が停止していた訳ではないのだが、とにかく、何もする気が起こらなかったのである。もしかすると、老人性のうつ病ではないのか。そう思って、先日、散髪に出かけた際、試しに言っ…

構造と自由(その11) 権力とは何か

権力とは、他者の意思に反して、当該他者を拘束し、支配しようとする力のことである。権力は、個人的なレベル、中間集団のレベル、国家のレベルにおいて、それぞれ存在する。権力の主要な構成要素は、暴力(軍事力)、経済力、思想(統制力)の3つである。 …

構造と自由(その10) 米国の凋落が意味すること

最初に、米国の権力構造について、所感を述べておきたい。米国は、世界一の軍事大国であり、世界最強の軍部を保有している。そして、米軍は兵器の製造会社によって支えられている。米軍と兵器製造会社は密接な関係を持っていて、米国の政治を動かすだけの力…

構造と自由(その9) 日本の権力構造

上の図に従って考えれば、権力の構造を説明することができる。まず、「知」があって、「知」が権力を生み出す。権力を生み出す主な「知」は、科学、宗教、その他の思想などを挙げることができる。そうやって生み出された国家レベルの権力は、軍事力、経済力…

構造と自由(その8) 構造の内側

上の図を見ていると、様々な発見がある。例えば、「依存者」について。依存者を規定している両極は権力と身体だ。暴走族や暴力団員は、この領域で生きているに違いない。彼らは権力そのものを否定したりはしない。あくまでも自らの身体を権力に服従させるの…

構造と自由(その7) 哲学の領域

上の図において指し示したように、哲学を形作る1つの極は「知」であり、もう一方の極は主体なのだと思う。奇しくもこの2つの極について、哲学の始祖であるソクラテスは意見を表明している。「知」について、ソクラテスは「不知の自覚」を持てと述べた。こ…

構造と自由(その6) 芸術と美

前回の原稿で、私は、芸術を再定義することが必要だと述べた。では、どのように再定義すべきなのか。今回は、そのことについて述べてみたい。 西洋と東洋とでは、異なる歴史的な背景を持っている。それは芸術についても言えるだろう。まず、簡単に西洋に対す…

構造と自由(その5) 芸術の使命

無文字社会においては、いや現代日本社会においても、その底流には原始宗教が息づいている。そして、原始宗教を構成する3大要素は、呪術、祭祀、神話である。やがて文字が普及し、これら3つの要素も発展を遂げ、今日的な意味での宗教が生まれたに違いない。…

構造と自由(その4) 権力と身体

権力とは何か。そう考えると難しい。しかし、権力が何らかの「知」を背景に持っていると考えれば、「知」の類型に従って、権力の類型を推し測ることが可能となる。そして、「知」には身体と親和的な関係を持つもの、反対に身体と対立するものがある。また、…

構造と自由(その3) 「知」から権力へ

人口密度が高まると、食料不足が発生する。人間同士の距離も近づくので、否が応でも、もめごと、争いごとが発生する。そのような紛争を解決する手段の1つとして、武力が誕生したのだと思う。そして、その武力をいかに効率的に使用するか、いかに勝負に勝つか…

構造と自由(その2) 身体から「知」へ

このブログでは、かねてより次の図を掲載してきた。 権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 しかしながら、この図だけでは語り尽くせない事柄がある。変更を加え、書き直す日々が続いたが、ようやく次の改定版に辿り着いた。 「構造と自由」と題した本稿の…

構造と自由(その1) はじめに

近ごろ、ミステリーとかサスペンスと呼ばれるテレビドラマを見ながら、晩酌をするのが習慣になった。最近この手の番組は、あまり流行っていないらしいが、BSで再放送をやっているので、それらを録画して見ている。「温泉若女将の殺人推理」とか「駅弁刑事(…

秩序の正体

ここに言う「身体」とは、人間生活の中核をなすものであって、健康や性に関わる身体技術や食文化などの生活技術を含むものとしよう。また、生活することを人生の基本とする人々を指す。これは、人類史における最古の領域だとも言える。 やがて、身体を否定す…

今日は、哲学の日

2422年前の今日、ソクラテスは毒杯を飲み干して、その命を絶った。ソクラテスの思想を称え、この日は哲学の日と定められている。 身体より、魂を! イノベーションより、持続可能性を! バーチャルより、リアルを! 秩序より、多様性を! 依存より、自立を!…

イノベーションの終焉

それがいつの頃から始まったのか、私は知らない。多分、その答えは資本論に書いてあるのだろう。 資本家が出資して、会社を作った。会社は多くの労働者を雇用し、何かを製造し始める。会社が製造したものを消費者が購入する。しかし、そのためには消費者があ…

時代が動くとき

権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 上の図を眺めていると、これによって過去の思想家たちのポジションをある程度、理解することが可能だということに気づく。 まず、トマス・ホッブズ(1588-1679)。ホッブズは、人間には自然権、すなわち生きる権利…

権力についての試論

ボールペンで書いた一見シンプルなこの図をデスクマットの下に置いて、私は毎日、それを眺めている。 権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 人間の文明を構成要素に分解すると、上の図における4つの要素に還元されるのではないか。そして、文明が大きく…

童話「桃太郎」における構造

どうやら、私たちが生きているこの世界には、構造がある。哲学の世界においても構造主義が一時期流行ったようだが、やがてそれは衰退した。その理由は意外と単純で、構造が判明したからと言って、それではどうすればいいのか、という問いに答えを提供できな…

経験としての芸術

人間は実に多様なのであって、互い理解し合える人など、まず、いない。長年つきあった友人や恋人であっても、事情は変わらない。何故だろうと思う訳だが、理由の1つに経験の違いということがある。生まれた時代が違う。場所が違う。性の違いによっても、経…

私の歴史観

太古の昔から、人間には生活があった。いや、人間がまだサルだった時代から、生活は存在していたに違いない。生活の中心は、身体にある。何かを食べて、セックスをする。出産して、子育てをする。衣服を着る。住居を作る。最近の事例で言えば、グルメや健康…

世界観について

文明論的動物ファンタジーと称して「猫と語る」という作品を掲載してきて、先日、脱稿した。その評価を含め、あとがきのようなものを書こうと思ったのだが、どうも書けない。現時点では、私自身、この作品を評価できないのだ。私史上、最高作であるような気…

猫と語る(第14話) エピローグ/魂から真理へ

それから20年が経過した。私の髪はすっかり白くなり、腰も曲がってしまった。痛くて、真っ直ぐには伸ばせないのだ。外出する時には、ステッキを手放せなくなった。 漁港近くのアパートから、地方都市の中古マンションへと引っ越しもした。クルマの運転が不安…

猫と語る(第13話) 黒三郎の魂

- そろそろ、ワシらも出発するとしよう。 猪ノ吉はそう言って、南の方角に向けて歩き出した。黒三郎は、何も言わずに飛び立った。私は背中に花ちゃんを乗せたまま、着いていくことにした。猪ノ吉は、うり坊たちのペースに合わせて、ゆっくりと進んだ。海岸…

猫と語る(第12話) 真夜中の思想

- ぷんぷく山? 猪ノ吉がオウム返しにそう言った。 - まずは、ぷんぷく山の位置を確認してみよう。 私は左手で懐中電灯をかざしながら、右手で地面に道路地図を広げた。 - いいかい。青い部分は海だ。そして、漁港がここだから、今、俺たちがいるのはこの…

猫と語る(第11話) 希望のかけら

Tシャツの上に薄手のジャンバーを羽織って、私は、にゃんこ村に向けてクルマを走らせていた。気分は上々だった。花ちゃんに対するレッスンは無事に終了したし、今日は、新製品のカリカリも入手していたのだ。しかし、いつもの駐車場に着くと、何とも言えない…

猫と語る(第10話) 遥かなる真理

1週間が過ぎ、私は色づき始めた木々を眺めながら、にゃんこ村のベンチに座っていた。花ちゃんは私の足元にいて、黒三郎と猪ノ吉も一緒だった。 - 花ちゃん、それじゃあ最後のレッスンを始めよう。人間の世界を説明するに当たって、どうしても言っておきたい…

猫と語る(第9話) 幻想共同体

黒三郎の言葉は、私の心に重く響いた。確かにこの地球上において、人間は最低の存在なのかも知れない。しかし、それは人間がミッシェルの夫を殺害したからではない。人間だって他の動植物を食べなければ、生きてはいけない。そして人間たちは、多分、ミッシ…

猫と語る(第8話) ミッシェルの悲劇

花ちゃんの呼び掛けに応じて、黒三郎は梢から舞い降りてきた。 - もちろん、オイラにも言いたいことはある。 - 何だ、言ってみろ。ニャー! - お前らは、何故、カラスを嫌うんだ? オイラたちが、黒いからだろう。お前たちは、他の生き物を見た目で判断し…