文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2025-03-01から1ヶ月間の記事一覧

背徳の美学(その18) 虹いくたび

川端康成の「虹いくたび」という作品を取り上げるべきか、私は、非常に迷った。1度は止めようと思った。何故かと言うと、私自身がこの作品を失敗作だと思うからである。私自身が感動していない作品を取り上げることに、意味があるだろうか。しかし、この作品…

背徳の美学(その17) エロスから美へ

私たちの心の大半は、無意識によって構成されている。そしてこの無意識は、それぞれの国や地域における文化と深い関係があるのだと思う。そこに暮らす人々の無意識が文化を醸成し、育まれた文化が無意識に影響を与えるのではないか。例えば私は富士山が好き…

背徳の美学(その16) エロスと美

川端康成の文学世界を構成する要素として、私は、先の原稿で美、狂気、死の3つを挙げた。しかし、どうもしっくりこないのである。例えば、雪国においては芸者、駒子のなまめかしい肢体が描かれ、同時に駒子の弾く三味線の音も称えられている。この2つは、…

背徳の美学(その15) 私たちの時代

1966年に行なわれた安部公房との対談から、三島由紀夫の発言を引用させていただく。 - 19世紀と20世紀の間に、フロイドがいるということが、とても大きなことでね。フロイドがあって、それによって文学が随分影響を受けて、そうして性の問題なんかでも、扱…

背徳の美学(その14) 新感覚派の登場

「文芸時代」が創刊された1924年、川端は若干25才だった。以下に紹介する川端の思想に触れると、彼がいかに早熟だったかが分かる。川端が提唱した文学理論は当時、とても新しかったし、その後、晩年に至るまで彼はこのような方法論に基づき、小説を書き続け…

背徳の美学(その13) 近代日本文学の経緯

川端康成の文学作品をより良く理解するためには、少し、時代背景だとか川端の考えていた文学理論なども調べてみた方が良いだろう。 まず、日本における近代文学は、明治維新から始まった。 〇 文語体から口語体へ それまでの幕藩体制が終わり、中央集権国家…

背徳の美学(その12) 美女と踊子

川端康成は、日本人としての自己の無意識を探究した作家である。川端の作品が分かりづらいと言われる理由がそこにある。川端自身、次のように述べている。 - 自作を解説することは、所詮自作の生命を局限することであって、作家自らは知らぬ作品の生きもの…

背徳の美学(その11) 眠れる美女/あらすじ

「眠れる美女」は、1961年11月、川端康成が62才の時に完結した中編小説である。「伊豆の踊子」を前期、「雪国」を中期とし、この「眠れる美女」は川端の後期における代表的な作品だと言えよう。 若い頃、この作品に接した私は、これは谷崎潤一郎の「痴人の愛…