文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2025-04-01から1ヶ月間の記事一覧

背徳の美学(その21) 深層の世界

近代日本文学の頂点を極めたのは、川端康成と三島由紀夫の2人ではないか。ここに谷崎潤一郎を加えるべきだという意見もあるだろう。その意見にあえて反論しようとは思わない。しかし、私はやはり川端と三島の2人だと思うのだ。 川端と三島は何故、あのように…

背徳の美学(その20) 川端康成と三島由紀夫

日本が敗戦した1945年(昭和20年)、3月10日には10万人以上が死亡したと言われる東京大空襲があった。3月17日には硫黄島が陥落し、4月1日には米軍が沖縄本島に上陸した。この頃、「この事態をより的確に語りつぐべきだ」と考えた海軍報道部は、大物の報道班…

背徳の美学(その19) 銀の乳杯

前回原稿からの続きで、「虹いくたび」について検討する。 川端は自らの清野少年との経験から、何らかの精神的、性的な発育に関する問題が、同性愛を引き起こすと考えていたのだと思う。作中の竹宮少年は、女言葉を話す。そこから百子は、竹宮少年の中に同性…