文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2026-01-01から1年間の記事一覧

ユング風、文明の4元説

ユングの心理学をベースにすると、人間には意識と無意識がある。そして、それぞれに個人的なものと、集合的なものがある。また、意識と無意識は対立していて、その中心に自己(Self)が位置付けられる。意識と無意識の統合とも言えるし、無意識の意識化とも…

ロゴスへの告発、エロスからの反逆

アンティゴネをネットで検索していたところ、ある絵画を見付けた。杖を付いた老人がいる。老人は、若くて美しい娘の肩を借りている。これは「コロノスのオイディプス」の終盤を描いたものに違いない。ロゴスとしてのオイディプスと、エロスを象徴するアンテ…

ロゴスとエロスの相克

ソポクレスの作品としては、「オイディプス王」が最も有名だろう。オイディプスはあくまでも真相を明らかにしようと努め、その結果、彼自身が実父を殺害し、彼の妻が母親だったという驚愕の真実が明らかとなる。その過程は、あたかも推理小説のごとくスリリ…

ギリシャ悲劇「アンティゴネ」のあらすじ

ギリシャ神話とは、主に口頭で伝承された神々に関する物語であって、それを最初に文字化したのは、紀元前8世紀頃のホメロスだと言われている。ギリシャ悲劇と言った場合には、ギリシャ神話に触発された詩人たちが演劇用の台本として文字で書いたもので、紀…

毒親のメカニズム

流行語や若者たちが作り出す隠語の中には、人間社会の真実を表現する優れた言語が含まれている。例えば、陽キャと陰キャというのがあるが、これはユングが発見した外向的、内向的という人間の性向を巧みに表現している。ブラック企業とか社畜という言葉は、…

人格の分裂と統合 あとがき

本稿は、言ってみれば私にとって「心の終活」のようなものになった。途中、意図が変化した部分があって、その点は、申し訳なかったと思っている。今後は、書きながら考えるのではなく、考えたことを書くように心がけたい、と反省している。 思えば、近年、私…

人格の分裂と統合(その14) ミクロコスモス

「汝自身を知れ」という言葉がある。誰の言葉かと言うと、それは古代ギリシャに七賢人と呼ばれる人々がいて、その中のギロン、若しくはタレスが言ったのだとされている。七賢人の言葉は、デルポイにあったアポロン神殿のどこかに刻まれ、ソクラテスにも影響…

人格の分裂と統合(その13) 円熟の過程

文明の進展と共に、現代人の心の中では意識と無意識の分裂が発生する。その分裂してしまった意識と無意識の間にパイプラインのようなものを敷設し、統合を図ろうという主張が、ユングの主張した「個性化」である。換言すれば、無意識の内容を引き上げて意識…

人格の分裂と統合(その12) 本稿の整理

本稿(人格の分裂と統合)の本旨は、人生の道程について考えることにある。しかし、振り返るとはなはだ分かり難い進捗を遂げているので、少し整理をしようと思う。 〇 川端康成の「古都」について 前回の原稿で、何故、私が川端の「古都」を取り上げたのかと…

人格の分裂と統合(その11) 「古都」川端康成

川端康成が「古都」を執筆したのは1961年10月8日から、翌年の1月23日までの約3か月半の期間であり、原稿は朝日新聞に連載された。川端は1961年11月3日に文化勲章を受章したこともあり、多忙を極めていた。また、睡眠薬を多用していたため、川端自身の弁によ…

人格の分裂と統合(その10) 元型について

古代より人間の無意識を形成し続けてきたイメージ、すなわち元型は、現代日本においてもマンガやアニメの世界において、表出し続けている。それは自我の確立や精神的な成長を希求する人々のニーズが、それだけ大きいことを示している。マンガやアニメは、と…

人格の分裂と統合(その9) 自我への配慮

思うに「自我」とは、価値観の体系ではないか。私の場合は中学生の頃、ローリング・ストーンズに出会って、急激に自分の中の価値観が成長したように思う。当時はビートルズとストーンズが比較され、それは雑誌や友人との会話に頻繁に登場するトピックだった…

人格の分裂と統合(その8) 心的エネルギー

まず、前回の原稿「個性化と弁証法」に記した課題について、決着をつけよう。やはり私は、弁証法という楽観的な考え方には賛成できない。また、意識と無意識の中心に自己というものを措定するというユングの考え方にも違和感を覚える。とりあえず心の中心点…

人格の分裂と統合(その7) 個性化と弁証法

ユングが想定していた心の階層は、次の通りである。 第1階層: 意識(その中心を自我と呼ぶ) 第2階層: 個人的無意識 第3階層: 集合的無意識(=普遍的無意識) 第4階層: 類心的レベル 意識は、言わば心の司令塔のようなもので、記憶や知識を手繰り寄せる…

人格の分裂と統合(その6) 自己(Self)の発見

ユングの思想的な遍歴は、前回の原稿に記したタイプ論から始まり、元型論、個性化を経てシンクロニシティに至った。この4つは複雑に絡み合っていて、静的なものから動的な思想へと発展したように思える。 タイプ論に関する前回の原稿に書き洩らしたことがあ…

人格の分裂と統合(その5) ユングのタイプ論

暇人である私は、時折、自分の考えをAIにぶつけて反応を見てみる。このような行為を世間では「壁打ち」と言うらしい。ちなみに最近私が使っているのは、グーグルAIである。先日、私は次のような問いを投げてみた。 私・・・オイディプスの悲劇をベースに、私…

人格の分裂と統合(その4) 人生の道程

最近は、「人生」などという大仰な言葉は使われなくなった。最早、それは禁句であるとさえ言える。何故かと言うと、それだけ時代の価値観が冷めているからだと思う。しかし、人は誰しもたった1回限りの人生を歩んでいることは確かで、そうであるのだから、…

人格の分裂と統合(その3)

古代ギリシャにテバイというポリス(都市国家)があった。テバイの王はライオスと言った。ライオスは「自らの息子に殺されるだろう」という神託を受けていた。そのためライオスは、妃のイオカステとは交わらないようにしていたのだが、ある夜、酒に酔ったラ…

人格の分裂と統合(その2) オイディプス王

ギリシャ神話も当初は口頭で伝承されていたのであり、それがいつの時代に始まったのかということは、最早、誰にも分からないのである。現在、文字データとして残っている最古のものはホメロス(前9~8世紀)の書いたイリアスとかオデュッセイアだと言われ…

人格の分裂と統合(その1) はじめに

ネットなどでニュースを見るにつけ、暗い気分になる。戦争とジェノサイドに関わるものばかりで、ロクなニュースがない。どうすればいいのだろうと、今月70才になる私でも、そんな青臭いことを考える。思うにどんなに立派な制度や組織、ルールを作っても、最…

見え始めた米国の孤立化(その2)

前回の原稿を掲載した翌日には、孤立化する米国の姿が明らかとなった。米国はイラン戦争への応援を要請したが、NATO加盟国を中心に、ほぼ全ての国々がこれを拒否したからである。そんな中、高市総理の訪米があった。トランプに抱き着く彼女の姿を見て、私は…

見え始めた米国の孤立化(その1)

最近の選挙における投票行動だとか、世論調査の結果を見ていると、日本人のメンタリティーの中心には、恐怖とヒューマニズムがあるように思えてくる。まず、世界情勢としてはウクライナ戦争があり、イスラエルのガザ虐殺がある。これは恐怖だ。そこで日本人…

複雑な心境

最早、この世への未練を失った私ではあるが、それでも生きている訳で、心静かに暮らしたいと願っている。本でも読もうと思い、本棚を眺めて見ると、今の私に丁度良い本が見つかった。「ソフィーの世界」である。帯にはこんな宣伝文句が書かれている。 - 世…

この世への未練

このブログでは、昨年の暮れに掛けて「魂の証明」というタイトルでシリーズ原稿を掲載した。書き進めながらも漠然とした課題を抱えていたのだが、ある日、突然ひらめいたのである。そして私は、12月29日に「あとがき」を書いた。その時私は、私の思想が一応…

魂への配慮

<知性について> 調べてみると人間の知性の起源は、相当古い。古代ギリシャにおいてピタゴラスらが天文学や数学を研究するはるか以前に、エジプトやメソポタミアの文明が、それらに着手していたのだ。今から5千年前のことである。例えば、エジプトのピラミ…