文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 2 文化の起源としての言葉

サルが人間になるプロセスとして良く言われる事には、まず、2足歩行があります。当初、我々の祖先は樹上に住んでいた訳ですが、氷河期になり木々は枯れ果て、森がサバンナ(草原)に変わってしまった。そこで我々の祖先は、木の上から草原に降り立ち、2本足で歩くようになったと言われています。

次のステップとしては、“火”の使用があります。発掘された遺骨の調査により、180万年前頃から、我々の祖先の奥歯が急速に小さくなっていることが分かっています。従って、その頃から我々の祖先は生肉を食べるのを止めた、すなわち火を使うようになったと考えられています。

“火の使用”をもって文化の起源であるとする説もありそうですが、先の定義に従えば、これは身体保存行為であって、文化には該当しません。やはり人類が生み出した最初の文化は、“言葉”だったのではないでしょうか。

コミュニケーションの手段として、最初に使われたのは、身振り手振り(Body Language)だったと思われます。ゴリラは、他の動物を威嚇するために胸を叩きます。雲行きが怪しくなってくると“レイン・ダンス”を踊るチンパンジーもいるそうです。

次の段階としては、原始的な“歌”があったとする説もあります。なんとなく、抑揚を付けて声を発する。その抑揚によって、意味を伝えたのでしょうか。ただ、これは“歌”というよりも、“声を使ったコミュニケーション”だと考えた方が良さそうですね。

そして、“言葉”が誕生します。

二足歩行を始めたことにより気道が広がり、人類の喉が様々な声を発するのに適した形状に進化した、という説があります。しかし、人類は言葉を使うようになって、より複雑な音声を発する必要が生じ、そのために喉や舌が進化した可能性もあるのではないかと思います。このように進化と文化が連動して発生することを“遺伝子と文化の共進化”と言います。

ところで、人間はいつ頃から言葉を話すようになったのでしょうか。

我々、ホモ・サピエンスの祖先は、遅くとも7万年前には、文法を持つ言語を使用していたとする説があります。(文献1)このことは、発見された槍の製造方法の複雑さから推論されています。

但し最近になって、16万年前にネアンデルタール人が宗教的な儀式を行なっていた痕跡が発見されています。もしかするとホモ・サピエンスよりもネアンデルタール人の方が先に言葉を使っていたのかも知れません。


(参考文献)
文献1: 人類はどこから来て、どこへ行くのか/エドワード・O・ウィルソン/科学同人/2013