文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

No. 95 朝鮮半島情勢、シナリオはあったのか

朝鮮半島情勢についてですが、数日前、浅田真央さんの引退ばかり報道していた日本のマスコミが、堰を切ったように本件を取り扱っています。本件に関しまして、報道規制のようなものがなかったことが明らかにとなり、嬉しく思っております。もちろん、軍事作戦上の事項は秘密扱いとなっているのでしょうが、それは国民の利益に資することであり、当然だと思います。

さて、本件に関するその後の情報を簡単に振り返ってみます。米国の原子力空母、カールビンソンですが、当初の報道では15日には朝鮮半島沖に到着するはずでしたが、まだ到着していません。ホワイトハウス国防総省の間で連携ミスがあった、との報道もあります。そんな馬鹿な、とは思うのですが、既に情報戦の様相を呈しており、何が真実なのか、知る由もありません。他方、ニミッツと横須賀に停泊中のロナルドレーガンを合わせて、空母3隻で対応に臨むとの報道もあります。

さて、マスコミ報道に関しましては、過去の経緯から防毒マスクの値段まで、一応、出尽くした感がありますが、結局、今、日本に住む我々がどういう状況に置かれているのか、これからどうなるのか、肝心な点は、どうもはっきりとしないように感じているのですが、いかがでしょうか。

ロジックで考えた場合、今後の展開は、次の3種類かと思うのです。

1. 軍事力によって解決される。

2. 話し合いによって解決される。

3. 当面、解決されない。

まず最初の「軍事力による解決」ですが、どうもこれは相当困難なようですね。何しろ、韓国のソウルは北朝鮮との国境から40キロ程度しか離れていない。従って、米国側から先制攻撃を仕掛けた場合、ソウルが火の海になるというのは、あながち北朝鮮の嘘ハッタリでもなさそうです。また、日本の被害も回避することが困難なようです。東京に核ミサイルが投下された場合、瞬時にして42万人が死亡するというシミュレーション結果もあるようです。してみると、このシナリオというのは、なかなか現実に起こりそうもない。

次に、「話し合いによる解決」ですが、北朝鮮は自らが核兵器保有することを米国が認めなければ対話に応じない、という態度に固執しているようで、それは米国が飲める条件ではない。よって、この可能性も低いのではないでしょうか。中国が金正恩を亡命させ、一生面倒を見る、という可能性もあるとは思うのでが、必ずしも金正恩がそこまで追い込まれている状況とも言えず、この可能性も高くはないように思います。

そうしてみると、「当面、解決されない」という第三の可能性が高いように思えます。実際どうなるのか、それはもちろん私にも分かりません。もしかすると、今月の25日前後に事態が進展しないとも限りません。しかし、現在、公表されているメディアの情報からすれば、本件は、簡単には解決しそうもない。

拳を振り上げる時には、その落としどころを考えなくてはいけませんし、米国のことだから、当然、考えているだろうと思っていたのですが、どうも雲行きがおかしい。トランプ大統領は、もしかすると落とし所を考えることなく、拳を振り上げてしまった可能性も否定できないように思うのです。落とし所は見えていなくとも、北朝鮮ICBMの開発を阻止するためには、そうせざるを得なかったのかも知れません。

分かりませんが、上記の推測が現実にマッチしていた場合、当分、本件の解決は望めないこととなります。解決しないということは、すなわち、北朝鮮核兵器やミサイルの開発が継続することを意味します。そうなった場合、北朝鮮が最初に希望することは何でしょうか。それは、民族の統一、韓国を併合することではないでしょうか。もちろん、それは日本にとって、好ましいことではありません。そうならないことを願っていますが、もしかすると我々日本人が直面しているリスクとは、ここにあるのかも知れません。

今月、16日の日曜日に放送されたNHK日曜討論という番組では、最後に司会者がこう尋ねました。「米国と北朝鮮の軍事衝突を避けるためには、どうすればいいと思いますか?」 それは、感情レベルでは、理解できます。何とか軍事衝突、すなわち戦争は回避してもらいたい。それは、私もそう思います。しかし、私たちが直面している課題を定義するとすれば、その質問は近視眼的に過ぎると思うのです。今、私たち日本人が見るべき課題のフレームワークは、もう少し広く設定する必要がある。仮に、当面の戦争が回避されたとしても、その後、完全に核武装した北朝鮮という隣国と向き合わなければならないとするならば、それはそれで大変大きな課題であると言わざるを得ないと思うのです。

とは言え、今さら日本が軍備を増強したとしても、大国にかなう訳ではありません。そうではなくて、何か、日本の平和を維持していくための戦略なり、対話力の強化などが求められているのではないかと思うのです。