文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

太郎さんの仁義なき戦い

一昨日(6月19日)、新宿西口で開催された山本太郎さんの街頭演説会、凄い人出だったようです。そして、またまた、太郎節が炸裂したんです。その部分だけをピックアップした動画もあります。私は勝手に、文字起こしをしてみました。

 

経団連の中心にいるような、執行部たちが、あまりにも腐り過ぎてないかって話なんですよ。おそろく、連合も腐っているでしょうけれども。(苦笑)消費税10%にしろなんて労働組合あるかよ!(聴衆・・・そうだあ! 拍手!)何のための労働組合だよって話ですよ。言って行きますね。連合のことも、今からは。もう仁義なき戦い、始まってますよ。はっきり言って。喧嘩上等ですよ。それが嫌なんだったら野党一つになれよってことですよ。消費税5%でまとまって戦わんと、これ変えられないじゃないですか。その圧力を掛けるために1人で旗振ってんですよ。でもいいですよ。ある時期が来てからは、徹底的にやりますから。

 

今ネットの中で流れているんです。どうして予算委員会がこれだけ長期間に渡って何か月も開かれていないのか。その理由は何なんだって質問を広島で受けました。それに対して私は、その理由は野党第一党のせいだってことを言いました。だって、自民党側と折衝するの、野党第一党なんだから。筆頭間協議ですよ。筆頭間協議。それに対して、どうして、しっかりつっぱねないのっていう話なんですよ。それだけのこと。私は質問に対して、立憲民主党ですよって答えを言ったんです。それに対して、どうして野党を叩くんだっていう話なんです。違うよ。立憲民主党の支持者がお尻叩けばいいじゃないかって。何をユルユルやってるんだって話ですよ。次で参議院に捩れを作るっていう気迫がないんやったら、どうして政治やってるんですかって話ですよ。いつやるんですかって。次の選挙は、その次の選挙の地固めなんですって、いい加減にしてくれますか、ですよ。何年苦しんだら、その苦しみから解放されるんだって話ですよ。希望を見せてくれってことですよ。それを見せられるのが政治だろって。与党側に見せられたこの地獄みたいな景色を変えられる、一緒にやろうって、変えてみせるって、私たちがやればこんなに生活が良くなるよっていう旗を振って、皆に希望を持たせて、それで一緒に力を集めて変えていくっていうのが野党の仕事だろうって。万年野党でいるつもりかって話ですよ!(聴衆・・・そうだあ! 拍手!)」

 

私はリアルタイムでツイキャスを見ていたのですが、この箇所では思わず「そうだあ!」と叫んでしまいました。

 

ちょっと、解説致します。前段の部分は、連合に対する批判ですね。連合というのは労働組合ですが、最近の連合幹部の言動と、私の個人的な経験を重ね合わせて考えますと、これは企業側の意向を忖度し、賃金や労働条件を低く抑えようとする「御用組合」だと思います。太郎さんも指摘していますが、最近、連合の幹部は「消費税を予定通り10%に上げる」よう自民党に陳情しています。どうして労働組合が企業側になるかと言えば、それは労組の役員に関する人事権を企業の人事部が掌握しているからだろうと思います。こういうパターンですと、企業側の利益を誘導する労組の役員というのは、出世コースに乗ります。

 

そして、連合が支持して来たのが、(旧)民主党です。今で言えば、立憲民主党(以下「立憲」)と国民民主党(以下、「国民」)ということになります。連合はこれらの政党に政治献金を行い、選挙ともなればポスター張りなどで協力しているものと思われます。最近は、市民と野党の共闘などと言って、前述の2党に加え、共産党社民党なども仲良くやっていますので、結果、連合を批判する人というのは、いない訳です。別の言い方をしますと、連合を批判するのは、野党勢力の中でタブー視されている。

 

太郎さんはそこに切り込んだので、事情を分かっている人たちから喝采を浴びた訳です。私自身、若い頃には同盟系の労組にヒドイ目に合わされた経験があります。現役時代、決して口にすることのできなかったタブーを太郎さんが言ってくれた。溜飲が下がるとは、正にこのことです。また、連合に対する批判を含めて、同じ野党だろうが戦うぞ、という意味で、太郎さんは「仁義なき戦い」という言葉を使ったのです。

 

太郎さんの演説の後段部分は、立憲に矛先が向けられています。こちらも、若干補足させていただきます。(旧)民主党の勢力は、前述の通り、立憲と国民に分かれており、両党は内輪もめをしています。立憲の方が優勢です。国民の最近の政党支持率は、0.6%~1%程度なのです。そこで、今度の参院選の結果次第で、国民は消滅する可能性がある。立憲民主党の幹部は、そう見ている。そこで立憲の幹部は、今度の7月の選挙で、まず国民を潰し、その後の選挙で自由にやろうと考えているという見方がある訳です。太郎さんは、立憲のこのような態度を批判している。

 

そこで、「今は、野党が協力して安倍政権を倒すべきだ。野党間の批判は、慎むべきだ」という意見について考えてみましょう。

 

このような場合私は、「達成すべき目標は何か」と考えてみます。それは言うまでもなく、現在不足しているマネーストックを増やし、景気を回復させることです。そして、そのための手段として、消費税廃止や“れいわ新選組”が掲げているその他の政策がある。

 

他方、このまま野党が共闘して、仮に、政権を取った場合はどうでしょうか。

 

権力の構造は、こうなっています。

 

大企業 → 経団連 → 自民党 ・・・緊縮財政、増税路線
大企業 → 連 合 → 立憲  ・・・緊縮財政、増税路線

 

自民党も立憲も緊縮財政、増税路線です。してみると、このまま野党が共闘して、立憲主導で勝利を収めたとしても、本来の目的である「反緊縮、財政出動」路線(マネーストックを増やす)にはなりません。すなわち、目標は達成されないことになります。

 

してみると、ここは「喧嘩上等」という太郎さんの判断が正しいことになる。

 

そして、昨日(6月20日)、立憲が記者会見を開き、同党の経済政策が発表されました。この様子は、同党のHPから動画を見ることができます。これを見た最初の印象は、暗い、ということです。記者会見なのか、お通夜なのか、分からない。結論から言えば、立憲の立場は消費税据え置き(8%)ということでした。

 

目前に参院選を控え、記者の方々に政策をアピールできる貴重な場です。例えば、パワポを使って様々な指標を説明しながら、「だから、わが党はこう考えるんだ」と熱弁を振るうべき場だと思うのですが、そういうことは一切ありませんでした。

 

結局、立憲は自民党の批判はできますが、経団連や連合、そしてその先にある大企業と戦うことはできないのです。(旧)民主党時代の政策も踏襲しようとしている。手かせ足かせが多すぎて、まともな経済政策を作ることができない。

 

連合との関係を清算しない限り、立憲は、日本国民のための経済政策を策定することができないのではないでしょうか。