日米FTAのリスクを端的に表現する標語を作ってはどうか。そう思って、考えました。
FTA 病気になったら ホームレス
実際、アメリカには55万人のホームレスがいるそうです。例えば、1千万円程度の年収がある人でも、大病を患うとホームレスに転落してしまう。民間の保険には入っている。でも、それで十分な医療費を賄うことができず、自己破産し、ホームレスになる。日本をそんな国にしていい訳がありません。日米FTAダメ、絶対!
日本において、経団連は強い権力を持っています。経団連は、大企業の集まりですが、大企業には無数の下請け企業がついている。そして、従業員の家族まで含めると、相当な数に及ぶ。そこで経団連は、自民党に対し、巨額の政治献金を行い、組織ぐるみ選挙で応援する。だから、自民党は経団連に頭が上がらない。
アメリカも、基本的には同じ構図にあるのではないか。例えば、経団連の100倍、いや千倍位の規模を持った多国籍企業が存在する。しかし、多国籍企業には株主が存在する。企業経営者よりも株主の方が強い。彼らを「国際金融資本」と呼びましょう。国際金融資本は多額の献金を行い、アメリカの政治を支配する。そして、アメリカが日本を支配する。こういう関係なんですね。
国際金融資本 - 米国政府 - 自民党(日本政府)
経済の面で考えますと、国際金融資本は、日本の大企業の株主にもなっているので、経団連はこれに逆らえない。経団連は多額の広告・宣伝費を使うので、メディアはこれに逆らえない。
国際金融資本 - 経団連 - 日本のメディア
現在日本で進行しているグローバリズムの構造は、このようになっていて、日米FTAもこの流れで進行している。
先の原稿で、グローバリズム 対 反グローバリズムという構図を書きましたが、現実の政治を見ますと、もう少し詳しく対立軸を見ていく必要がありそうです。2番目に大きな対立軸は、緊縮財政 対 積極財政 ではないか。アメリカはとにかく、日本を貧困化させたいと考えているので、グローバリズム、対米従属の立場からすると、必然的に緊縮財政を選ぶことになる。更に、小さな対立軸ではありますが、3番目として、伝統的な右派、左派という概念を入れてみましょう。現在の与党は、次のようになります。
グローバリズム - 緊縮財政 - 右派 ・・・ 自民、公明、(維新)
次に、立憲民主党の立ち位置を考えてみますと、その最大の支持母体は連合です。連合は、労働者の利益を代表すべき労組の団体ですが、その実態は御用組合で、企業の利益を優先している。すると、連合と経団連は同じ立ち位置にあり、立憲の立場は次のように表現できます。
このように見て行きますと、実は、自民と立憲というのは、とても近い立ち位置にあることが分かります。見かけ上の右派と左派の違いしかありません。仮に、自民の方を似非右翼と表現するならば、立憲は似非左翼だと言えるのではないでしょうか。グローバリズムや対米従属を標榜しておいて、右翼も左翼も嘘だろう、という訳です。
現在の日本は、大別して4つの政治的課題を抱えていると思います。以下の通りです。
よくよく考えますと、これらの課題は2つの種類に分けることができる。日米FTAはアメリカと直接やり合う訳で、これは国際的な課題だと言えます。消費税の増税は、法人税の減税と表裏の関係にある。従って、この問題は国際金融資本の利害に影響を及ぼす。よって、こちらも、国際的な課題だということになります。
他方、原発は、アメリカから言われてやっているのではなく、どうも日本国内の利権に支えられている。原発マネーの還流については、最近、関西電力の事例で明らかになりつつあります。また、小泉前首相も「原発は、総理が止めると言えば、止められる」と発言しています。よって、日本の原発問題というのはアメリカや国際金融資本の利害には、結びつかない。これは国内問題だと言えます。
最後に憲法ですが、私の読みとしては、これも国内問題だということになります。確かに、アメリカは米軍に代わって、日本の自衛隊に戦ってもらいたいと考えている。しかし、この点は2015年に成立した安全保障関連法(戦争法)に基づき、既に、日本は集団的自衛権を認めているのです。自衛隊は、ホルムズ海峡にまで出向くことができる。この時点で、米国政府やCSISは満足している。では、安倍政権が何故、憲法改正に熱心なフリをしているかと言えば、それは支持団体である日本会議などの顔色を窺っており、かつ、安倍政権の延命を図るための方便としてやっているのだと思います。何しろ、「憲法改正を成し遂げるまでは」と言い続けなければ、安倍晋三が総理を続ける意味がなくなってしまう。
1. 日米FTA ・・・ 国際的な課題
2. 消費税 ・・・ 国際的な課題
3. 原発 ・・・ 国内問題
4. 憲法 ・・・ 国内問題
何故このような話をするかと言うと、これで立憲民主党の立ち位置が明確になると思うからです。1番と2番の国際的な課題について主張すると、国際金融資本やアメリカ政府のご機嫌を損ねることになる。だから、立憲は何も言わない。他方、3番と4番の国内問題であれば、何を主張しても、国際金融資本とアメリカ政府のご機嫌を損ねることがない。立憲は、国内問題については威勢がいいのですが、国際的な課題となると、からっきしダメなんですね。立憲が主張している脱原発、憲法改正反対、加えて夫婦別姓、同性婚の容認など、いずれも国内問題だと言えます。
だから立憲民主党は、日米FTAの国会審議において、一応、反対票を投じはしましたが、戦わないのです! 嘘だと思うなら、枝野氏のツイッターを見てください。日米FTAには、全く触れられていません。
そもそも、グローバリズム、対米従属を旨としておきながら、“立憲”民主党という党名は、いかがなものか。立憲主義というのは、反グローバリズムであるはずです。(詳細は後述します。)だから、党名に惑わされて、かつては支持をした人々が、今、立憲を離れているのです。(かく言う私も、その1人ですが)
ただ、立憲民主党と一口に言っても、その党名の紛らわしさもあって、様々な党員がいるのも事実です。消費税廃止を主張する石垣のりこ氏、消費税減税を模索する荒井聡氏、MMTに基づく積極財政の可能性を探る須藤元気氏、本当の意味での立憲主義を考える山尾志桜里氏などの名前を挙げることができます。
ちなみに、荒井聡氏は、最近「格差解消と消費税を考える会」を立ち上げました。これは、山本太郎さんと馬淵澄夫氏が「消費税減税研究会」を立ち上げた直後だったので、立憲による“れいわ潰し”ではないか、という見方がありました。しかし、その後の情報によれば、「格差解消と消費税を考える会」が藤井聡氏を講師に招くということです。藤井氏は生粋のMMT論者(積極財政派)なので、これは本気で消費税の減税を考えていることが推察されます。“れいわ潰し”と言うよりは、立憲内部の分派行動だと思います。ちなみにこの会、共産党の小池氏も参加しており、同氏は「大変興味深かった」とツイッターで述べていました。小池氏はマルクス経済学には詳しいのでしょうが、MMTの勉強は、これからなのかも知れません。
ついでと言っては何ですが、国民民主党の立ち位置についても、述べておきましょう。現在、同党の小沢一郎氏は、年内の野党合併を主張しています。小沢氏の意向としては、立憲、国民、社民、加えて“れいわ新選組”の合併を意図している。興味深い動画があります。小沢氏は、元来、緊縮財政を主張していたと思われますが、この動画を見ると、積極財政に方向を変えていることが分かります。特に44分頃からが面白いので、ご参考まで。
小沢一郎・国会議員在職50周年記念インタビュー 全56分
(今後の政局については、44分から)
https://www.youtube.com/watch?v=IsweBmVdI4U
小沢氏が年内合併論をぶち上げた後、会食に誘ったのは枝野氏の方だった。ちょっと、二人の会話を想像してみます。
枝野・・・小沢先生、合併の範囲について、どうお考えでしょうか。
小沢・・・そりゃね、皆で一緒になればいいじゃないか。社民党にも声を掛けなきゃ。
枝野・・・分かりました。ところで、“れいわ新選組”の山本さんは・・・。
小沢・・・太郎君か。彼はね、なかなかのナイスガイだよ。
枝野・・・しかし、彼は消費税を5%に減税しなければ、と言っている。それは私たちとしては、飲めないんです。なんとか、小沢先生から説得してもらえませんか?
小沢・・・話は太郎君に伝えるけれども、ちょっと無理じゃないかな。
大体、そんな所だと思います。しかし、小沢氏と枝野氏のポジションを考えますと、接点は少ない。
反グローバリズム - 積極財政 - 左派 ・・・ 小沢氏
グローバリズム - 緊縮財政 - 左派 ・・・ 枝野氏
よってこの合併話、どうなるかは分かりませんが、かなり無理があるように思います。更に、小沢氏のやり方についても、枝野氏は警戒している。小沢氏のやり方というのは、とにかく合併前は謙虚なのです。例えば、合併相手の政策を丸のみする。ところが一度合併すると、急に剛腕を発揮し始めるんです。枝野氏が小沢氏のこのようなやり方を警戒しているのは、間違いありません。
すなわち、現在、小沢 対 枝野という対決構図が、水面下で進行している訳で、関係者はかたずを飲んで見守っている。別の言い方をすると、どう転んでも良いように、関係者は様子を見ているということだと思います。国民民主の玉木代表が、同党の定例記者会見で消費税について聞かれても曖昧な答弁繰り返しているのは、彼が風見鶏だということです。
先の原稿で、スピン報道ということに触れましたが、上記のように考えますと、これを読み解くのは、そう難しいことではありません。
まず、日本国民に対して圧倒的な不利益をもたらす日米FTAの問題があった。このタイミングで、何故か、共産党の田村智子議員が「桜を見る会」の問題を取り上げた。意外にもその反響が大きかった。そこで、立憲がこれに飛び付いた。これは、野党全体で取り組んで行こう、ということになった。こういう経緯だったと思います。すなわち、まず、日米FTAの問題があって、立憲をはじめとする野党はこれに反対すべき立場にあった。しかしながら、これに反対すると国際金融資本やアメリカ政府を敵に回すことになる。そこで、「桜を見る会」をスピンに使った。「桜を見る会」の問題は、野党が使ったスピンだったということです。
一方、自民党にしてみると「桜を見る会」の問題は、思いのほか痛手となった。事案が単純で、庶民でも分かり易い。画像や写真がふんだんにあるので、テレビでも視聴率を稼げる。芸能人が絡むので、庶民が興味を持つ。これはマズイ、ということになって、沢尻エリカの事件をスピンに使った。
こうして、日米FTAの問題から国民の関心は、ドンドンずれて行く。この問題を積極的に取り上げている政治家って、山本太郎さんしかいない。右派の藤井聡氏も、そう言っています。
日本の行き先 藤井聡 5分
https://www.youtube.com/watch?v=A4HX7PjjLac
“れいわ新選組”は、次の衆院選に向けて、候補者の公募を始めました。既に、ネットだけで111人の応募があったそうです。やはり、単独で戦うしかなさそうです。その時は是非、消費税を5%に減税するということではなく、私は、消費税の廃止を主張していただきたいと思っています。
さて、これでグローバリズム勢力の分析は終わりです。後半として、反グローバリズム勢力を検討したいと思っています。近日中に、アップする予定です。