文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

民主的で強い国

来年の4月には、日米FTA第2段階の交渉が始まります。フルパッケージで日米FTAが締結されると、すなわち、ISDS条項や為替条項を含む条約が締結されると、この国に生きる普通の人々が、生きていくことさえ困難な時代がやって来る。農薬まみれや遺伝子組み換えた食品が、その旨の表示さえなく、スーパーやコンビニに出回ることになるでしょう。癌を始めとし、多くの病人が出る。加えて、医薬品の値段は高騰し、国民皆保険すら解体されるかも知れない。病人とホームレスが急増し、必然的に自殺者も増える。これが、すぐそこまで来ている日本の近未来図です。

 

戦後、日本の民主主義を守ろうと努めて来た左翼の皆様に対し、尊敬の念と共に、申し上げたい。あなた方は、敗北したのです。

 

戦後の左翼運動というのは、「民主的で弱い国」を目指して来た。その背景には、軍国主義はダメだ、全体主義は嫌だ、という発想があったと思います。勢い、国家権力というのは弱い方がいいということになる。経済政策でも、緊縮財政を容認して来た。ところが、「弱い国」というのは、グローバリストたちにとって、格好の餌食となる。

 

象徴的な論点として、憲法9条があります。戦後の左翼運動は「戦争反対! 9条を守れ!」ということに主眼が置かれて来た。しかし、本当にそれで良かったのか。言うまでもなく、9条2項には、戦力の不保持と交戦権の放棄が定められています。それでいいんだ、無抵抗主義で行こう、という崇高な理念を持っている人もいる。しかし、多くの国民がそこまで達観できるはずがない。また、日本が戦力を持たない、若しくは戦力を持つことに消極的だということは、米軍の日本支配を容認することにつながって来た。そして、米軍による日本支配と、冒頭に記した日米FTAの問題を切り離して考える訳にはいきません。アメリカ政府は、日本に対する軍事的支配力を背景として、日米FTAの締結を迫って来ている。率直に言えば、日本の左翼は、アメリカに象徴されるグローバリズムに(結果として)加担してきたことになる。

 

加えて、護憲派と呼ばれる左翼運動家たちは、「憲法の話をすると、憲法改悪につながる危険があるので、憲法の話はするな」と主張して来た。(この点は、“護憲的改憲”を主張している憲法学者小林節氏がそう述べています。)そこで、憲法論議はタブー視されることとなり、我々日本の庶民の視界から、憲法が消えてしまった。この罪は重い。更に、改憲論議が進まないので、勢い、解釈改憲という欺瞞が横行し、結果、内閣法制局憲法を解釈するという、許しがたい行為が慣例化してしまった。憲法を定めるのは、主権者である国民のはずです。それを役人ごときが解釈を捻じ曲げていいはずがない、というのが私の立場です。

 

憲法学を歴史的に見ても、現在の国連憲章からしても、国が軍隊を持ってはいけない、という発想はありません。何故なら、どの国だって自国を防衛する権利があるからです。禁止されているのは、他国に攻め入ることなのです。従って、日本だって、軍隊を持つことは許されてしかるべきなのです。

 

このような問題意識に立ちますと、憲法9条は改定して、日本は自衛隊を軍隊として規定すべきではないのか、ということになります。繰り返しますが、軍隊と言っても、あくまでも自国を防衛することがその設置理由であって、他国に攻め入ることが許されていいはずはありません。

 

先般、アフガニスタンの支援に人生を掛けて来た中村哲医師が殺害されるという悲痛な出来事がありました。これは、日本がアメリカとの集団的自衛権を認めたから起こった事件であり、憲法とは関係がないと思います。

 

では、どうすれば良いのか。私は、次のように考えます。

 

1. マルチ商法と癒着している嘘つきの安倍政権には退場してもらう。

 

2. 国民的大論議を繰り広げた後、憲法9条を改正する。

 

3.自衛隊を軍隊として位置付ける。

 

4.集団的自衛権は、認めない。・・・集団的自衛権というのは、一般に、小国が集まって大国に対抗することを意味しています。しかし、現在の日本はアメリカに隷従しており、アメリカという大国の指示に従って、日本の自衛隊が活動する目的で、集団的自衛権を認める法律(安全保障関連法、別名、戦争法)が制定されている。これは、日本の防衛と関係がありません。

 

5.自衛隊は、日本の領土、領海、領空が攻撃された場合のみ、防衛することができる。・・・個別的自衛権

 

6.自衛隊は、日本が攻撃された場合のみ反撃を行うことができる。・・・専守防衛

 

7.自衛隊の防衛能力は、現在、世界6位の実力を持っている。これ以上、補強する必要はない。よって、9条を変えた後でも、自衛隊の規模は拡大しない。歯止めとして、軍事費はGDPの1%以内に限定する。

 

8.自衛隊の目的は、専守防衛である。よって、原則として、他国を攻撃する武器は持たない。すなわち、他国を攻撃する「核兵器」は持たない。むしろ、核兵器の不拡散に関する条約(NPT)に加盟する。

 

9.自衛隊に関する文民統制シビリアンコントロール。すなわち現在も過去も軍人ではなかった者が、自衛隊を統制する。)を定める。

 

10.現在、日本には軍隊がないことになっており、仮に自衛隊員が戦時下に敵兵や民間人を誤射してしまった場合でも、刑法(殺人罪など)が適用されることになる。かかる不合理を回避するため、戦時中の行為に適用されるべき法律を作る。

 

いかがでしょうか。このような9条改憲であれば、左翼の人も右翼の人も、納得していただけるのではないかと思うのですが。(核武装すべきという右翼の人とは相容れないことになりますが)

 

私が何故、今、憲法の話をするかと言えば、理由は2つあります。1つには、自民党改憲を主張していることです。この機に乗じて、憲法論議を盛り上げるべきではないか。

 

2つ目の理由ですが、アメリカ政府が韓国や日本から米軍を引き揚げる可能性があるということです。ご案内の通り、アメリカの国力は衰退しています。最早、「世界の警察」の役割を担うだけの国力がありません。そこでトランプは、自国第一主義を唱えている訳です。

 

しばらく前に、北朝鮮がミサイルを発射して、緊張感の高まった時期がありました。その際トランプは、「中国に責任を果たしてもらいたい」ということを仕切りに言っていました。その背景として、アメリカは北朝鮮を制圧するつもりがない、ということだったように思います。

 

あまりに複雑かつ大きな問題なので、私にもどうなるかは分かりません。しかし、アメリカ軍が日本から撤退するという可能性は、ゼロではない。これは十分に起こり得ることではないか、と思います。すると、日本は自力で自国を守っていかなければならなくなります。これはリスクでもありますが、大きなチャンスでもあると思います。すなわち、心ある日本人の悲願だった「日本独立」も夢ではないということです。

 

そろそろ私たち日本人は、この国をどうしていくのか、本気で考えるべき時期に来ていると思います。そして私は、今日までの左翼が主張して来た「民主的で弱い国」という思想を脱却し、「民主的で強い国」を目指すべきだと思っている訳です。