また1人、単独者が立ち上がった。立憲民主党に離党届を提出した須藤元気さんのことだ。消費税は減税すべきだ、山本太郎さんを応援したい、上の人には引退してもらいたい、とのこと。立憲の幹部にしてみれば、最後の「上の人には引退してもらいたい」というのが、1番こたえたのではないか。
そもそも、現在の立憲は3つの課題を抱えている。危機的な状況にあると思う。1つには、低落傾向が続く政党支持率。いくつかの世論調査において維新に抜かれ、野党第1党の座すら危うくなっている。第2の課題は、国民民主などとの合併協議が、一向に進まないこと。合併を進めなければ、現在の野党そのものの存続が危ぶまれるというのが、小沢一郎氏の意見だが、かく言う国民民主の支持率だって1%程度に過ぎない。第3の課題は、離党者が相次ぐこと。山尾志桜里氏に続き、須藤元気さんまで離党ということになると、今後、離党者が続かないという保証はない。
そこで注目されるのが、今年の9月に予定されている代表選。増税・緊縮路線を採る現在の立憲執行部に対し、反緊縮を訴える40名強の若手グループが存在するらしい。彼らはグループのリーダーを選出し、代表選に候補者を擁立するのではないか。その場合、枝野氏が勝っても、若手代表が勝っても、立憲が割れる可能性がないとは言えない。
もちろん政党を作るというのはとても大変な作業だし、政党助成金の問題もある。しかし、政治家にとっての最大の関心事というのは、「次の選挙で自分が当選できるか」という点にある。従って、「このまま行けば、次の選挙で自分が落選するのではないか」と危惧した政治家は、行動する。従って、地滑り的に野党再編という動きが生ずる可能性もあるのではないか、と思う訳です。実際、先般、国民民主に入党した馬淵澄夫氏は、野党再編を主張している。
次の衆議院選挙はいつかと言うと、それは今年の10月である可能性が高いと言われています。理由の1つには、オリンピックの開催可否判断がその頃には下されるだろうということ。理由の2つ目としては、今年の11月に開催されるアメリカの大統領選で、トランプが敗れる可能性がある、ということ。(最近の世論調査で、コロナ対策に失敗したトランプの支持率はバイデンに負けている。)オリンピックは開催できない、トランプも落選した、ということになると、自民党にとっては決定的に不利な方向に世論が動く。そうなる前に、解散してしまおう、ということです。本日、河井夫妻が逮捕されたこともあり、自民党内部でも安倍下ろしの動きは加速するように思われます。
そもそも、政治の世界というのは、一寸先は闇な訳で、何が起こるかは誰にも分かりません。しかし、上に記した国内の情勢に加え、世界的なコロナによる影響やBlack Lives Matterと呼ばれる黒人の人権擁護運動などの動きを見ておりますと、現在の私たちが大きな変化の中にいることは、間違いないように思います。
そして、日本に暮らす私たちの不幸の原因の1つには、信頼に足る確固たる野党勢力が存在しないことにある。換言すると、現在の日本人には、進むべき方向が見えていない。「自民党にはうんざりだけど、野党もね」ということになり、政党支持率は与党も野党も下がり、無党派層ばかりが増える。その原因の1つは、立憲に代表されるような「緊縮左派」と呼ばれる野党の体質にあると思うのです。「緊縮リベラル」と言っても良い。
この緊縮左派を支える主要なメンタリティというのは、「正義」を主張する点にある。戦争はいけない、平和を守ろう。それは、そうなのです。私もそう思うし、それが正義だ。自民党政権の金権体質がいけない。この主張も正しい。私も、異議はありません。そして、このようなメンタリティがどこからやって来るかと言えば、それは法律学ではないかと思うのです。法律を学ぶと、論理的な正しさを希求するようになる。それはそれで、とても大切なことですが、いくら正義を主張しても、貧困に苦しむ大衆にパンを与えることはできない。
モリ、カケ、サクラ。
アンリ に クロカワ。
電通の中抜きに、パソナのピンハネ。
安倍政権が引き起こした上記の疑惑について、私は、ハラワタが煮えくり返る程、怒りを覚えます。だから、国政調査権に基づいて、国会でこれらの問題を追及することは正しい。そう思う訳ですが、どの疑惑1つとっても未だに解明されていない。
冷静に考えてみますと、官製談合があれば、それは公正取引委員会が摘発すれば良いのではないか。税金の無駄遣いについては会計検査院が、そして公選法や刑法に違反する事例については、検察が強制捜査を行えば良い。
しかし、現在の安倍政権は官僚の人事権を握っており、公取委、会計検査院、検察などの行政組織が適正に機能しているとは言いづらい状況にある。では、どうすれば良いのか。それは、結局、政権を取る以外に方法はない。では、どうやって政権を取るのか。それは、民主国家である日本においては、選挙で勝つ以外に手はない。では、どうやって選挙で勝つのか。それは、国民のマジョリティを構成する大衆に語り掛けるしかない。
立憲を離党した山尾志桜里氏は、先日、国民民主に入党届を提出し、会見を開いておられました。その会見だったか、その後のYouTube番組だったかは忘れましたが、このようなことを言っておられました。
「政局よりも国家のビジョンや政策を論議すべきだ」
これを聞いて、私は少し失望してしまいました。真理や正義を追求するのであれば、それは学者でもできる。国会を閉じている期間こそ、政治家たる者、大衆に語り掛けるべきではないのか。
「緊縮左派」の政党には、司法試験合格者が多い。もちろん、彼らは法律の勉強をしている。だから、正義を求める。口を開けば、難しい言葉を使う。パターナリズム(上から目線で意見すること)を嫌う大衆の気持ちは、当然、彼らから離れていく。彼らは自らを正義の味方だと勘違いし、自己満足に陥っているのではないか。
法律学も大切ですが、今、一層、求められているのは経済学の方だと思います。そしてそれは、緊縮派の経済学ではなく、反緊縮の方だと思います。これはもう、世界的な潮流になるに違いない。コロナで疲弊した経済をなんとかするために、日本を除く先進諸国では相当額の給付金が国民に配られています。本当に困ったときには、国がお金をばら撒けばいいのだ、ということを先進諸国の国民は体験的に学習しているのです。アメリカで民主党のバイデンが大統領になれば、この流れは加速するに違いありません。(バイデンは、バーニー・サンダースの支持を得ている。)
このような流れの中で、東京都知事選の幕が切って下ろされた訳です。メディアは、その争点を小池都知事のコロナ対策とか、オリンピック問題だと報道していますが、そんなことはありません。本当の争点は、「緊縮」対「反緊縮」の経済(財政)政策です。
そう言えば、れいわ新選組の主要メンバーだと思われる3人、すなわち太郎さん、大西つねき氏、安冨歩氏の3人は、皆、経済に詳しい。う~ん。れいわ新選組にも強力な法律の専門家が、1人位は欲しいような気がしますけど。