需要が供給を上回れば、商品の値段は上がる。するとその商品を製造すれば多くの利益をあげることができるので、新規の事業者が参入するなどして、供給が高まり、やがて物価は安定する。反対に供給が需要を上回れば、商品の値段は下がり、事業者は生産量を調整する。こうして、資本主義社会における需給関係は、安定へと向かう。こんなことは当たり前の話で、今でも学校では、そう教えているのではないか。
私も漠然と、そう考えてきた訳だが、どうも現実は違うようだ。
日本を含めた西側先進諸国においては、科学の進展が様々な新商品を生み、人々の暮らしは充足されてきた。そして、需要が減退した。日本では、加えて消費税が導入(1989年)され、需要の減退に拍車を掛けたのである。すると供給過多となり、物価が下がった。デフレである。その時代が長く続き、減税すべきだという意見が出て来た。これが積極財政と呼ばれる考え方である。減税をして、消費を拡大すれば、好景気がやってくるという主張である。(一応、私はこの考え方を支持している。)
ところが、30年にも及ぶデフレは、日本経済における供給力をも衰退させてきたのである。需要が減退すれば、企業の利益も低下する。若しくは、赤字に転落する訳だ。2024年度における企業の倒産件数は、10,006件に及ぶ。企業が倒産するということは、そこに働く従業員が職を失うのみならず、その企業が持っていたノウハウが失われることを意味する。
需要が減退し、供給力も衰退したのであれば、バランスが取れて良いではないか、と思いがちだが、そうはいかない。既に日本社会は複雑なインフラを所有しており、その維持、管理に多大な労力を割かなければならないのである。ここで言うインフラにはもちろん、道路や橋、水道設備、電気設備など、物理的なものを含む訳だが、加えて、独立行政法人など官僚の天下り先団体、様々な行政上のシステムなどを含めて考えるべきだろう。
そして、少子高齢化、人口減少という問題がある。日本の農業従事者の平均年令は69.2才だそうだ。あと、5年で半減するのではないか。
つまり、日本社会は、既に供給力が不足する時代に突入したのである!
需要不足であれば、「景気が悪いなあ」程度のことで済むが、供給力の不足は深刻である。既に、大工さんがいないので家が建たないという現象が、日本各地で起こっている。かく言う私も、5月に浴室のリフォームを発注したが、未だに工期すら決まらない。職人さん不足なのだ。介護士、保育士、教員、運転手なども不足している。
この供給力不足に対応する方策の1つは、IT化である。例えば、マイナンバーカードを普及させれば、行政上の事務は簡素化できるだろう。しかし、実際にはシステムを作り、維持していくための仕事が新たに発生する訳で、どの程度の効果があるのか、疑問である。
もう1つの方策は、移民の受け入れである。政治学者の白井聡氏は、最早、その良し悪しを論議する余地はなく、移民の受け入れを拡大しなければ、日本の社会は成り立たないだろうと述べている。但し、移民を拡大すれば治安は悪化するし、文化的な摩擦も起こる。
米国ではトランプが登場し、明らかに反グローバリズムに舵を切った。移民を強制送還させ、関税を上げようとしている。トランプの動きに呼応するように日本でも自国ファーストを謳う右派の政治勢力が台頭している。但し、米国はエネルギーを他国に依存しなくてもやっていけるが、他国にエネルギーを依存している日本では、事情が異なる。
どうすれば良いのか、私はその答えを持っていない。こんな日本にしてしまった権力者たちに、その答えを尋ねてみたいと思う。すなわち、自民党などの政治家、政策を主導してきた官僚、そして大学の教授たちに。
(参考動画)
【選挙目前】なぜ政治家は増税を望む?/日本社会のリベラルはおかしい!/国民劣化は政治の腐敗を引き起こす...(政治学者 白井聡)【ニュースの争点】