文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2016-07-01から1ヶ月間の記事一覧

No. 12 呪術という名の心の世界

前回までの原稿で、私たちの祖先は、様々な自然現象などを理解するために“物語”という仮説を立てた、そして“物語”によって死を乗り越えようとしていたのではないか、というお話をさせていただきました。次は、どうしたのか。今度は、世界に対して、能動的に…

No. 11 物語における”別れ”とは何か(その2)

「遠野物語」に掲載されている“大津波”では、経験がほぼそのままの形で語られていました。今回は、もう少し物語としての脚色がなされている“鶴の恩返し”を取り上げてみたいと思います。 有名な話ですが、簡単にあら筋を振り返ってみましょう。 ある雪の日、…

No. 10 物語における”別れ”とは何か(その1)

典型的な物語の結末は、ハッピーエンドかも知れません。「めでたし、めでたし」とか「そして、おじいさんとおばあさんは末永く、幸せに暮らしました」というパターンです。特に童話の場合は、読者として子供を想定しているので、このパターンが多いのはうな…

No. 9 「桃太郎」を読む

最初にあら筋を振り返ってみましょう。 昔々、おじいさんは山へ柴刈りに、おばあさんは川へ洗濯に出かけます。おばあさんが洗濯をしていると、川上から大きな桃が流れて来ます。おばあさんはこれを家に持ち帰り、おじいさんと一緒に食べようとしますが、桃が…

No. 8 仮説としての物語

言葉を発明し、記憶力と想像力を獲得した私たちの祖先は、霊魂の存在を信じ、埋葬を始めます。そして、様々な自然の中にも霊魂が宿っていると感じていた彼らは、恐れと敬意をもって、注意深く自然を観察していたのだと思います。しかし、彼らには分からない…

No. 7 頭を垂れた人々

言葉を覚え、アニミズムが生まれた頃、人々は親族関係を基盤とした20人程度のグループを作って、移動しながら暮らしていたのだと思います。同じ場所に長くいると食物がなくなってしまうという事情もあったでしょう。ただし、「ゴリラは食物が豊富にあっても…

No. 6 私たちの祖先は戦っていたか

アニミズムが生まれた頃、すなわち、私たちの祖先が狩猟採集のみを生活の糧として生きていた時代のことですが、「当時から、人類は好戦的だった」とする説(以下「好戦説」といいます)と、「当時の人々は平和に暮らしていた」とする説(以下「平和説」とい…

No. 5 言葉からアニミズムへ

前にも述べましたが、私たちの祖先が言葉を獲得したのは、7万年以上前のことです。では、その頃、言葉はどのような変化を人間にもたらしたのでしょうか。 一般に、言葉によって私たちの祖先は、“昨日”と“明日”を認識するようになったと言われています。すな…

No. 4 変容し続ける言葉

時間の流れの中で、言葉が変わっていくことは良く知られています。理由の一つには、より簡略で発音しやすい表現が採用される、ということがあります。例えば、「インターネット」が「ネット」に変わるなど。 言葉が変化し続ける理由について、私は、次のサイ…

No. 3 記号としての言葉

フェルディナン・ド・ソシュールというスイス人(1857年~1913年)が、かつて、記号論という考え方を提示しました。 記号の中で最も重要な役割を果たしているのは“言葉”ですが、それ以外にも図形や音などによって意味を伝える媒体があります。これらを総称し…

No. 2 文化の起源としての言葉

サルが人間になるプロセスとして良く言われる事には、まず、2足歩行があります。当初、我々の祖先は樹上に住んでいた訳ですが、氷河期になり木々は枯れ果て、森がサバンナ(草原)に変わってしまった。そこで我々の祖先は、木の上から草原に降り立ち、2本足…

No. 1 文化とは何か

考え方を論理的に組み立てるためにも、また、誤解を避けるためにも、最初に主要な言葉を定義しておくことは重要です。 “文化”という言葉の定義を巡って、過去にいくつかの論議があったようです。 1871年にイギリスの文化人類学者であるE.タイラーは、文化を…

はじめに

自然科学の急激な進展によって、宇宙や人類について、今日ではいろいろなことが分かってきたようです。 かつて、音も光も、空間や時間さえも存在しない、ある状況がありました。ただ、ある一点に膨大なエネルギーが集中していた。そして、大爆発が起こる。そ…

ブログの説明

文化と人間について考えるブログです。 予備知識は不要です。 誰しも文化から離れて生きることはできません。そうであれば、文化を理解して、文化を楽しむ、文化で遊ぶことが大切なのではないか。最近、そう思うに至りました。学者でもない無名の私がこのブ…