文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

大いなる無意識

昨年の暮れから、川端康成にはまってしまった。三島由紀夫の「文化防衛論」に関するシリーズ原稿をこのブログにアップしていたので、三島からその師匠である川端に興味の対象が移ったのである。川端の作品を年代順に読んで行こうと思って、まずは「伊豆の踊…

最近の心境と年末のご挨拶

最近、哲学に対する興味が急速に減退してきた。暴論であることを承知で言うならば、哲学の本質は2400年前にソクラテスとプラトンが言い尽くしたのではないか。その後のことを言えば、人権を発見したホッブズとロック、あとは人間心理の深層を探ったフロイト…

文学の頂

先月の末頃、三島由紀夫の遺作、豊饒の海を読み終えた。私は言いようのない充足感と共に、体から力が抜けて行くような、奇妙な感覚に捕らわれた。もしかすると、これは文学が到達し得る頂点なのではないか。そう思った訳だが、読了した直後の満足感から、そ…

文化防衛論/三島由紀夫(その14) 文化的エネルギー

三島は、様々な対立構造について語った。例えば、天皇と言論の自由。三島は天皇の人間宣言を批判している。つまり、天皇を相対的なものではなく、絶対的な、超越的な存在であるべきだと考えていた訳だ。但し、三島が理想とした天皇とは、戦時中、政治利用さ…

文化防衛論/三島由紀夫(その13) 言語化を拒む死

人間の中には、野生がある。この野生を解放し切った場合、どうなるのか。人間の世界には、殺人やレイプなど、ありとあらゆる犯罪が蔓延するだろう。そして三島は、人間の野生を人間性と呼び、そこから人間を守らなければならないと考えた。この人間を守る手…

文化防衛論/三島由紀夫(その12) 文武両道

三島は繰り返し文武両道を主張していたが、これがなかなか難しい。例えば、本文献(文化防衛論)には、次のような記述がある。 - 私が文武両道と申しております意味は、そのような優雅な文学が一方にある、一方には武士道があるというのが日本文化の一番本…

文化防衛論/三島由紀夫(その11) 文学の力

三島の思考対象は、広範に及んでいる。むしろ人間世界の全体に及んでいると言っても過言ではない。三島は、あたかも雑食の恐竜のように、世界のありとあらゆる事象を丸呑みしたのではないか。例えば、決起の日にあのバルコニーからばら撒かれた檄文は、ソク…

文化防衛論/三島由紀夫(その10) 行動

三島のこととなると、私は、ほとんどまともな評価というものを読んだり聞いたりしたことがない。例えば、野坂昭如は「赫奕たる逆光」(文献7)という本の中で、次のようなエピソードを紹介している。 野坂は、三島の推薦を受け「エロ事師たち」という作品で…

文化防衛論/三島由紀夫(その9) 文化を育む環境条件

三島の複雑で難解な思想を、どう言い表せば良いのか。三島自身、何とか多くの日本人に分かってもらおうと努力した訳で、その一例が「文化防衛論」なのだと思う。三島のそのような努力にも関わらず、彼の思想が人々に理解されたとは言い難い。三島はそのこと…

文化防衛論/三島由紀夫(その8) 古事記

敗戦後、最初に迎えた元旦、詔書が発布された。いわゆる天皇の人間宣言である。戦前、天皇は現人神と呼ばれていた訳だが、これが否定され、天皇も人間であることが宣言されたのである。戦後生まれの私などからすれば、当然のことと思う訳だが、これに三島は…

文化防衛論/三島由紀夫(その7) 真理は心の中にあり

現在、世界を席捲している思想なりシステムとは何かと考えると、一応、それは西洋文明だと言える。これに中東まで含めるとその中核にあるのは、旧約聖書ではないかと思えてくる。これを更に煎じ詰めると、旧約聖書に起源を持つ世界の3大宗教、すなわちユダヤ…

文化防衛論/三島由紀夫(その6) 武士道

武士道は、長い年月をかけて無数の武士たちが少しずつ形作ってきたものである。そもそも何故、武士という職業が生まれたのかと言うと、それは平安初期に荘園と呼ばれる土地の私有制度が生まれたことに深く関係している。当時は、まだ国家権力というものが存…

文化防衛論/三島由紀夫(その5) 陽明学

本棚をゴソゴソ探していると、奥の方から目当ての本が出て来た。三島由紀夫の「行動学入門」である。(以下「文献2」) 恐る恐る頁を開いてみると、用紙は既にこげ茶色に変色しているのだった。活字の小ささにも驚かされた。昔の文庫本は、今より一回り小さ…

文化防衛論/三島由紀夫(その4) 世界観

本稿においても三島の世界観を表わすいくつかの用語が登場したが、それらを整理してみようと思う。全ての概念を説明した後で、図を示すのが学術的な方法だとは思うが、この段階で提示する方が、手っ取り早く読者諸兄の理解を促進できると思う。 まず、文化、…

文化防衛論/三島由紀夫(その3) 文化と伝統

ある人の思想を検討する場合、自我の問題を避けて通る訳にはいかない。哲学者はそれを主体と呼び、多くの場合、文学者はそれを「私」と言う。 自我とは何かと考え始めると、それはもう切りがない。しかし、何らかの基準のようなものが必要だと思うので、ここ…

文化防衛論/三島由紀夫(その2) 人間観

本文献には、三島自身による11の論文等が掲載されている。それぞれを読み解いたところで、三島の思想を体系的に理解することはできない。そこで、これらの論文等を一度分解し、主要なテーマ毎に主張を再構築する必要があると思う。まずは、三島の人間観から…

文化防衛論/三島由紀夫 (その1) はじめに

先の8月9日に開催された長崎市の原爆犠牲者慰霊平和祈念式典において、長崎市長はイスラエルを招待しなかった。すると日本を除くG7各国の駐日大使らからクレームがつき、彼らはこの記念式典を欠席した。やはり、ユダヤの支配力は大きい。特に米国をはじめと…

狂い始めた世界

先の東京都知事選の際、どなたかが「日本社会の底が抜けた」と言っていたが、私も同感であった。ほぼ全裸と言われるポスターが掲示され、予想通り小池百合子が当選した。百合子は、そもそもカイロ大学を卒業していないのではないか。この点は、朝堂院大覚氏…

ワクチンを巡る論点

5月31日に、日比谷公園で大規模なデモがあった。その趣旨は、パンデミック条約に反対するというものだった。デモの参加者はとても怒っているようだったが、一体、何に対して怒っているのか、私には分からなかった。その後、相当な時間に及ぶYouTubeを視聴し…

経済権力と国家

まったくもって世の中、理不尽なことが多すぎると思う訳だが、その根源的な理由は、腐敗した権力にあると思う。では一体、権力者とは誰なのか。この点、最近、大西恒樹氏が面白い動画をアップした。 大西氏によると米国の主要な企業の株主を辿っていくと、以…

日本の政治は3項対立

政治の世界において一般に言われるのは、右か左かという判断基準だろう。また最近は、左右の対立は関係ない、という意見もある。そうだろうか? 左右の対立は明らかに存在するし、しかしながら、それだけでは説明し切れない事象も存在する。むしろ、日本の政…

自発的隷従論/ボエシ

これほど多くの論点を提起している本は、珍しい。ちくま学芸文庫から刊行されているエティエンヌ・ド・ラ・ボエシの「自発的隷従論」は、翻訳者自身による解説のみならず、20世紀の思想家たちや監修者である西谷修氏による解説が含まれている。それぞれの執…

自由とは何か

前回の原稿で、権力を構成する3つの要素について述べた。 暴力 思想 経済 シンプルな例で、少し、補足したい。 昭和の時代に、頑固親父と放蕩息子がいたとしよう。頑固親父は、戦時中に青年期を過ごし、特段、オリジナルな思想というものを持ち合わせていな…

権力とは何か

権力は「知」を背景とするが、往々にして権力は「知」を捻じ曲げ、抑圧し、骨抜きにする。例えば、企業にとって法令を遵守すること、すなわちコンプライアンスが重要だという「知」は、もう何十年も前から一般化されている。しかしながら、近年においても企…

ブルーの相棒

一昨日から本日に掛けて、2泊3日で房総半島(千葉県)の南端に行ってきた。 もうお酒を飲むことは諦めざるを得ないようだ。ブルーの相棒だけが、今の私の励みとなっている。 ブルーの相棒 昨日は嵐のような天候だったが、初日と今日は天候に恵まれた。 野島…

14日目の断酒生活

大腸ポリープを切除した関係上、私は、医者から飲酒を禁じられたのである。この禁酒は、9日間続いた。この期間については、「禁酒期間」と言おう。9日も酒を飲まずにいると、流石に体調は良くなる。胃酸の逆流による胸の痛みも発生しなかった。そこで私は、…

ブルーのスイフト・スポーツ

いくつになっても、新たにクルマを手に入れるのは嬉しいことだ。ここのところ、病気続きだった私だが、今日は久しぶりに笑みがこぼれた。 私自身が老いぼれてきたので、せめてクルマだけでもと思い、少し派手な色を選んだ。 スピーディー・ブルー・メタリック

脱権力としてのアナーキズム

2月8日に大腸ポリープの切除を受けた訳だが、その後、女医は私にこう言ったのだった。 女医・・・今後1週間、お酒は控えてください。それから、熱いお風呂もダメです。 煙草はどうなのだろう。そうは思ったのだが、どうせダメと言うに決まっているので、私は…

大腸ポリープの切除

実は私、昨日、大きな病院へ行き、大腸ポリープを切除してもらったのである。年始から始まった私の病院通いがいつ終わるのか、それはまだ分からないが、とりあえず憂鬱の種が1つ消えたことは確かだ。事の顛末をここに報告したい。 昨年の12月25日に突然発症…

胸の痛み(その5) 胃酸逆流日誌

昨年の末頃に始まった、耐えがたい胸の痛み。どうやら私が罹患しているこの病の正式名称は、食道裂孔(れっこう)ヘルニアと言うらしい。食道と胃の間には、胃酸が逆流しないように、弁のような働きをする括約筋がある。正確には下部食道括約筋と言う。この…