文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

人格の分裂と統合(その6) 自己(Self)の発見

ユングの思想的な遍歴は、前回の原稿に記したタイプ論から始まり、元型論、個性化を経てシンクロニシティに至った。この4つは複雑に絡み合っていて、静的なものから動的な思想へと発展したように思える。 タイプ論に関する前回の原稿に書き洩らしたことがあ…

人格の分裂と統合(その5) ユングのタイプ論

暇人である私は、時折、自分の考えをAIにぶつけて反応を見てみる。このような行為を世間では「壁打ち」と言うらしい。ちなみに最近私が使っているのは、グーグルAIである。先日、私は次のような問いを投げてみた。 私・・・オイディプスの悲劇をベースに、私…

人格の分裂と統合(その4) 人生の道程

最近は、「人生」などという大仰な言葉は使われなくなった。最早、それは禁句であるとさえ言える。何故かと言うと、それだけ時代の価値観が冷めているからだと思う。しかし、人は誰しもたった1回限りの人生を歩んでいることは確かで、そうであるのだから、…

人格の分裂と統合(その3)

古代ギリシャにテバイというポリス(都市国家)があった。テバイの王はライオスと言った。ライオスは「自らの息子に殺されるだろう」という神託を受けていた。そのためライオスは、妃のイオカステとは交わらないようにしていたのだが、ある夜、酒に酔ったラ…

人格の分裂と統合(その2) オイディプス王

ギリシャ神話も当初は口頭で伝承されていたのであり、それがいつの時代に始まったのかということは、最早、誰にも分からないのである。現在、文字データとして残っている最古のものはホメロス(前9~8世紀)の書いたイリアスとかオデュッセイアだと言われ…

人格の分裂と統合(その1) はじめに

ネットなどでニュースを見るにつけ、暗い気分になる。戦争とジェノサイドに関わるものばかりで、ロクなニュースがない。どうすればいいのだろうと、今月70才になる私でも、そんな青臭いことを考える。思うにどんなに立派な制度や組織、ルールを作っても、最…

見え始めた米国の孤立化(その2)

前回の原稿を掲載した翌日には、孤立化する米国の姿が明らかとなった。米国はイラン戦争への応援を要請したが、NATO加盟国を中心に、ほぼ全ての国々がこれを拒否したからである。そんな中、高市総理の訪米があった。トランプに抱き着く彼女の姿を見て、私は…

見え始めた米国の孤立化(その1)

最近の選挙における投票行動だとか、世論調査の結果を見ていると、日本人のメンタリティーの中心には、恐怖とヒューマニズムがあるように思えてくる。まず、世界情勢としてはウクライナ戦争があり、イスラエルのガザ虐殺がある。これは恐怖だ。そこで日本人…

複雑な心境

最早、この世への未練を失った私ではあるが、それでも生きている訳で、心静かに暮らしたいと願っている。本でも読もうと思い、本棚を眺めて見ると、今の私に丁度良い本が見つかった。「ソフィーの世界」である。帯にはこんな宣伝文句が書かれている。 - 世…

この世への未練

このブログでは、昨年の暮れに掛けて「魂の証明」というタイトルでシリーズ原稿を掲載した。書き進めながらも漠然とした課題を抱えていたのだが、ある日、突然ひらめいたのである。そして私は、12月29日に「あとがき」を書いた。その時私は、私の思想が一応…

魂への配慮

<知性について> 調べてみると人間の知性の起源は、相当古い。古代ギリシャにおいてピタゴラスらが天文学や数学を研究するはるか以前に、エジプトやメソポタミアの文明が、それらに着手していたのだ。今から5千年前のことである。例えば、エジプトのピラミ…

魂の証明(その16) あとがき

読み返してみると、本稿もまた散漫であり、分かりにくいものとなってしまった。しかし、もう年末だし、ここで一区切りを付けたいと思う。但し、私には満足感というか、安堵感もある。 このブログを始めて、ほぼ10年がたつ。スマホでご覧いただいている方々に…

魂の証明(その15) 文明の誕生

この世界には、人間が関与しない自然がある。また、人間が関与しているものもある。こちらの方は、文明と呼ぶことにしよう。 世界 = 自然 + 文明 では、ソクラテスが登場する前の文明はどうなっていたのか。そこには、文化があった。換言すれば、文化しか…

魂の証明(その14) 論点整理

紀元前399年、アテナイの法廷。被告人ソクラテスは、数百人の陪審員を前に、地声を張り上げて演説を行った。多分、何らかの自己弁護を行うだろうと思っていた陪審員たちに向けて、ソクラテスは説教じみた話を始めた。陪審員たちが憤慨したであろうことは、想…

魂の証明(その13) 内発的な規範力

最近の私の読書の傾向としては、ソクラテスからプラトンへ行き、ストア派に行き着いたのである。その次となると、キリスト教になる訳だ。この時代に焦点を当てたのはフーコーで、その著作は「性の歴史」という4分冊の大作である。私は既に最初の3冊は読ん…

魂の証明(その12) 文化と知性

古代ギリシャについて調べていると、文明の起源のようなものが見えてくる。簡単にその経緯を記してみたい。 最も古い文明の足跡は、輪廻転生という世界観と神話にあるようだ。これらは宗教が生まれる遥か以前から存在していた。 例えば、爺さんが死んだとす…

魂の証明(その11) 神の階梯

三島由紀夫の小説、「英霊の声」を読みながら、私の背筋はゾクゾクと寒くなった。話は、語り手が木村先生の主催する帰神(かむがかり)の会に出席するところから始まる。ここで行われる方式は、一般の神がかりとは異なり、他感法と呼ばれるもので、石笛(い…

魂の証明(その10) 美、エロティシズム、死

哲学の世界では、人間が目指すべき究極のものを真善美であると考えてきた。それはプラトンから始まり、約2000年後のカント以降まで続いている。人間には目指すべきものがある。しかもそれは、究極の何かなのだ。そう考えたのは、三島由紀夫も同じだろう。但…

魂の証明(その9) 輪廻思想の起源

前回の原稿で、私は、輪廻転生について東洋では仏陀が、西洋ではプラトンがこれを説き、両者の間に伝播はなかった。「不思議なこともあるものだ」と述べたが、どうやらこの理解は誤りだったらしい。訂正すると共に、お詫び申し上げます。 西洋の方を先に述べ…

魂の証明(その8) 哲学の目的

そもそも、哲学なんてものに興味を持っている人は、どれ位いるだろう。100人に1人もいないのではないか。哲学は金にならないし、そもそも哲学の勉強などしなくとも、日常生活は一向に困らないのである。むしろ、友人に哲学の話などしようものなら、嫌われる…

魂の証明(その7) 彷徨する魂

「ソクラテスの弁明」は以前、読んでいたが、本稿を書き始めてから「パイドン」、「饗宴」、「ゴルギアス」、「国家」と読み進めてきた。いずれもプラトンの作品である。これらの作品から、プラトンの思想の内実が浮かび上がってくる訳だが、そこに私は奇妙…

魂の証明(その6) AIとの哲学問答

私との哲学談義に付き合ってくれそうな人間は、見当たらない。そこで最近は、AIに論争を持ち掛けることにしている。但し、私は誇り高き埼玉県民の代表として、絶対にAIになど騙されないぞ、という心意気を持っている。なお、私が利用しているAIは、Windows 1…

魂の証明(その5) 幸福の条件

誰しも幸せになりたいと願っている訳だが、ある見方をすれば、その為には2つの条件がある。1つには、自分自身が満たされていること。それは、健康であったり、人間関係だったり、金銭的なことだったりする。それらが充実していれば、一応、その人は幸福だ…

魂の証明(その4) この世の真実

50年ほど前、私は19才だった。その頃だったのだ、「この世の真実」という言葉を聞いたのは。誰から聞いたのかはもう忘れてしまったし、ましてや誰の言葉なのか、私には知る由もない。しかし、当時の私はこの言葉に魅了されたし、未だに時折、この言葉を思い…

魂の証明(その3) エロスの道 (美の梯子)

プラトンの著作「饗宴」は、第一級の哲学書でありながら、優れた文学作品でもある。その仕掛けは興味をそそるし、読み終えた後には深い余韻が残る。この作品を読むと哲学と文学の起源が同一だったと思いたくもなる。 古代ギリシャにおいては、男たちが集まっ…

魂の証明(その2) 身体について

身体というのは、とても難儀なものだ。こんなものがあるから、人間は不便で仕方がないのである。時間が経てば腹が減るし、眠たくもなる。怪我や病気をすれば、痛くて仕方がない。いっそ、こんなものとは離れて、私という生命体を維持することはできないだろ…

魂の証明(その1) はじめに

最近、無力感に襲われている人が少なくないのではないか。私も、その1人である。イスラエル軍が、ガザ地区に地上侵攻したらしい。このようなニュースに接する度、私は自分が無力であることを思い知らされる。また、最新のニュースによれば、ウクライナ軍が東…

知性と権威

トランプ政権も2期目に入り、反知性主義という言葉を眼にする機会が増えた。但し、この言葉が意味する内実はとても複雑で、私自身、深い混乱に陥ったのである。何とか、この問題を整理してみようというのが、本稿の趣旨である。 そもそも、人間に知性は可能…

私の文芸主義

15世紀の後半に大航海時代が始まり、これが今日のグローバリズムの起源だと言われている。グローバリズムは経済と科学を推進の原動力とし、欧米の価値観を途上国に押し付けるものだった。グローバリズムは、西欧の近代主義を思想的な背景として持っていた。…

反権威主義の台頭

世界は揺れ動き、これからどうなるのか、不透明さを増している。トランプが2期目の大統領に選出された頃から、この傾向が一気に顕在化したのではないか。この何十年か、西側世界はひたすらグローバリズムを志向してきた訳だが、トランプがこれを一気にひっく…