無文字社会においては、いや現代日本社会においても、その底流には原始宗教が息づいている。そして、原始宗教を構成する3大要素は、呪術、祭祀、神話である。やがて文字が普及し、これら3つの要素も発展を遂げ、今日的な意味での宗教が生まれたに違いない。…
権力とは何か。そう考えると難しい。しかし、権力が何らかの「知」を背景に持っていると考えれば、「知」の類型に従って、権力の類型を推し測ることが可能となる。そして、「知」には身体と親和的な関係を持つもの、反対に身体と対立するものがある。また、…
人口密度が高まると、食料不足が発生する。人間同士の距離も近づくので、否が応でも、もめごと、争いごとが発生する。そのような紛争を解決する手段の1つとして、武力が誕生したのだと思う。そして、その武力をいかに効率的に使用するか、いかに勝負に勝つか…
このブログでは、かねてより次の図を掲載してきた。 権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 しかしながら、この図だけでは語り尽くせない事柄がある。変更を加え、書き直す日々が続いたが、ようやく次の改定版に辿り着いた。 「構造と自由」と題した本稿の…
近ごろ、ミステリーとかサスペンスと呼ばれるテレビドラマを見ながら、晩酌をするのが習慣になった。最近この手の番組は、あまり流行っていないらしいが、BSで再放送をやっているので、それらを録画して見ている。「温泉若女将の殺人推理」とか「駅弁刑事(…
ここに言う「身体」とは、人間生活の中核をなすものであって、健康や性に関わる身体技術や食文化などの生活技術を含むものとしよう。また、生活することを人生の基本とする人々を指す。これは、人類史における最古の領域だとも言える。 やがて、身体を否定す…
2422年前の今日、ソクラテスは毒杯を飲み干して、その命を絶った。ソクラテスの思想を称え、この日は哲学の日と定められている。 身体より、魂を! イノベーションより、持続可能性を! バーチャルより、リアルを! 秩序より、多様性を! 依存より、自立を!…
それがいつの頃から始まったのか、私は知らない。多分、その答えは資本論に書いてあるのだろう。 資本家が出資して、会社を作った。会社は多くの労働者を雇用し、何かを製造し始める。会社が製造したものを消費者が購入する。しかし、そのためには消費者があ…
権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 上の図を眺めていると、これによって過去の思想家たちのポジションをある程度、理解することが可能だということに気づく。 まず、トマス・ホッブズ(1588-1679)。ホッブズは、人間には自然権、すなわち生きる権利…
ボールペンで書いた一見シンプルなこの図をデスクマットの下に置いて、私は毎日、それを眺めている。 権力 | 身体 ――――|―――― 「知」 | 主体 人間の文明を構成要素に分解すると、上の図における4つの要素に還元されるのではないか。そして、文明が大きく…
どうやら、私たちが生きているこの世界には、構造がある。哲学の世界においても構造主義が一時期流行ったようだが、やがてそれは衰退した。その理由は意外と単純で、構造が判明したからと言って、それではどうすればいいのか、という問いに答えを提供できな…
人間は実に多様なのであって、互い理解し合える人など、まず、いない。長年つきあった友人や恋人であっても、事情は変わらない。何故だろうと思う訳だが、理由の1つに経験の違いということがある。生まれた時代が違う。場所が違う。性の違いによっても、経…
太古の昔から、人間には生活があった。いや、人間がまだサルだった時代から、生活は存在していたに違いない。生活の中心は、身体にある。何かを食べて、セックスをする。出産して、子育てをする。衣服を着る。住居を作る。最近の事例で言えば、グルメや健康…
文明論的動物ファンタジーと称して「猫と語る」という作品を掲載してきて、先日、脱稿した。その評価を含め、あとがきのようなものを書こうと思ったのだが、どうも書けない。現時点では、私自身、この作品を評価できないのだ。私史上、最高作であるような気…
それから20年が経過した。私の髪はすっかり白くなり、腰も曲がってしまった。痛くて、真っ直ぐには伸ばせないのだ。外出する時には、ステッキを手放せなくなった。 漁港近くのアパートから、地方都市の中古マンションへと引っ越しもした。クルマの運転が不安…
- そろそろ、ワシらも出発するとしよう。 猪ノ吉はそう言って、南の方角に向けて歩き出した。黒三郎は、何も言わずに飛び立った。私は背中に花ちゃんを乗せたまま、着いていくことにした。猪ノ吉は、うり坊たちのペースに合わせて、ゆっくりと進んだ。海岸…
- ぷんぷく山? 猪ノ吉がオウム返しにそう言った。 - まずは、ぷんぷく山の位置を確認してみよう。 私は左手で懐中電灯をかざしながら、右手で地面に道路地図を広げた。 - いいかい。青い部分は海だ。そして、漁港がここだから、今、俺たちがいるのはこの…
Tシャツの上に薄手のジャンバーを羽織って、私は、にゃんこ村に向けてクルマを走らせていた。気分は上々だった。花ちゃんに対するレッスンは無事に終了したし、今日は、新製品のカリカリも入手していたのだ。しかし、いつもの駐車場に着くと、何とも言えない…
1週間が過ぎ、私は色づき始めた木々を眺めながら、にゃんこ村のベンチに座っていた。花ちゃんは私の足元にいて、黒三郎と猪ノ吉も一緒だった。 - 花ちゃん、それじゃあ最後のレッスンを始めよう。人間の世界を説明するに当たって、どうしても言っておきたい…
黒三郎の言葉は、私の心に重く響いた。確かにこの地球上において、人間は最低の存在なのかも知れない。しかし、それは人間がミッシェルの夫を殺害したからではない。人間だって他の動植物を食べなければ、生きてはいけない。そして人間たちは、多分、ミッシ…
花ちゃんの呼び掛けに応じて、黒三郎は梢から舞い降りてきた。 - もちろん、オイラにも言いたいことはある。 - 何だ、言ってみろ。ニャー! - お前らは、何故、カラスを嫌うんだ? オイラたちが、黒いからだろう。お前たちは、他の生き物を見た目で判断し…
- 古くは2400年も昔の古代ギリシャ人が、既にこの言葉を使っていた。日本で言えば聖徳太子の時代から、更に千年も昔のことだ。つまり、ニュアンスの違いはあるかも知れないけれど、世界中の人々が魂という共通概念を持っていたんだ。英語ではSoulと言うし、…
秋の訪れを告げるような台風がやってきて、その翌日の空は高く、穏やかだった。私はにゃんこ村へ行き、いつものベンチに座っていた。私が猫たちを個体識別しているように、猫の側も人間を1人ひとり、識別している。猫おじさんである私の姿を見つけると、猫た…
翌週も、私はにゃんこ村を訪れた。いつものベンチに座って、ピーナッツを食べている。結局、かりんとうはおいしいので、食べ過ぎてしまうのだ。食べ過ぎれば、それは体重の増加につながる。ピーナッツであれば、かりんとう程食べ過ぎることはないし、食物繊…
数日後、私は再びにゃんこ村を訪れ、いつものベンチに腰かけていた。手にはかりんとうの袋を持っている。サクサクとした歯触りを楽しみ、その後にやってくる黒蜜の甘さを堪能しているのである。このかりんとうは、特蜜2度がけ製法によって作られた特別なもの…
- 花ちゃんは、人間の言葉を話すことができるんだね! せっかくだから、あそこのベンチに座って、少し話さないか? 花ちゃんはうなずくと、ベンチに向かって歩きだした。私が先にベンチに腰を下ろすと、花ちゃんはベンチに飛び乗り、私の右隣りに座った。 …
猫を撫でたときのあの感触が忘れられなくて、私は事あるごとに海辺のコンビニへ通うようになった。西の方角から説明すると、まず、山の斜面がある。斜面の縁に沿って、道路が走っている。道路に面して、コンビニがある。コンビニの裏手、すなわち東側が駐車…
クルマを走らせて、いつものコンビニへ行ったのだが、そこではある物を買うことができなかった。ある物とは、かりんとうのことだ。何を隠そう、最近、私はこれにはまっている。サクサクとした歯触りがあって、その後、口の中にほんのりと広がる黒糖の甘み。…
人生は長いようで短い、と人は言う。しかし、それは人の感じ方次第なのだ。例えば私の場合、既に充分生きてきたように感じている。好きなビールもたらふく飲んだ。音楽も聞いた。旅行にも行った。もう行きたいと思う所はほとんどない。幸か不幸か、それでも…
- 上代から今に至る長い時間に工夫し得た結果として昔よりも生活が楽になっていなければならないはずであります。(中略)けれども実際は何(ど)うか。打明けて申せばお互いの生活ははなはだ苦しい。(中略)否開花が進めば進むほど競争がますます劇(はげ…