文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

文化領域論

文化とメンタリティの領域図(Version 2)

寒くなってきましたが、皆様におかれましては、いかがお過ごしでしょうか。 思えば、明日は文化の日。だから、という訳ではありませんが、表題の図を作成してみました。内情を申し上げますと、まず、このブログにはテキストデータと写真しか掲載できません。…

文化領域論の「目次」を作成しました

2018年6月 はじめに ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 196 目 次 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 197 第1章: 文化が誕生するプロセス ・・・・・・・・・・・・・・・・・ No. 198 1.記…

No. 228 文化領域論 あとがき

文化領域論をお読みいただきました皆様、どうも有り難うございました。前回の原稿をもちまして、完了と致します。こんな面倒なことを何故、始めてしまったのか、途中、何度も後悔しましたが、なんとかゴールすることができました。 ここに記載しましたことは…

No. 227 第15章: 芸術の「その後」(その2)

小説の種類も相当ありますが、ここではまず純文学を想像系、身体系、記号系の3種類に分類して検討します。 (敬称略) 文学の世界も他の文化と同じように、基本的には神話などの「宗教的な虚構」に始まり、段階を経て「論理的現実」に向かった。その主流を…

No. 226 第15章: 芸術の「その後」(その1)

歴史的な観点から、文化を考えますと、総合的な文化としての宗教がありますが、宗教と密接な関係を持ちつつ発展してきた芸術、すなわち音楽(身体系)、美術(物質系)、文学(想像系)があります。その経緯につきましては既に述べましたので、その後、すな…

No. 225 第14章: 原理の発見(その2)

3.概念 まず、現象なり事実を発見する。そして、想像力を働かせ、時間の流れに沿って因果関係を考える。そして、多くの事例を見ていると、いくつか共通する事項が発見され、概念が生まれる。チェックポイントと言って良いかも知れません。 例えば、私たち…

No. 224 第14章: 原理の発見(その1)

この「文化領域論」も、いよいよ最終的な段階に入りました。本章におきましては、未だ検討が不十分であると感じておりました「想像系」について、記載することに致します。 さて、記号学のパースは、科学的な発見には2種類あると述べています。1つ目は「○○…

No. 223 第13章: ポピュラー音楽の潮流(その3)

5.プリンス 考えれば考える程、前回の原稿に記しました“黒人教会”というのは、優れた社会システムだと思うのです。男でも女でも、大人も子供も、参加できる。学歴だとか会社における役職など、そこでは何の意味も持たない。おまけに、悪魔や魔術に関する楽…

No. 222 第13章: ポピュラー音楽の潮流(その2)

3.ジャズ 1900年代に、ジャズはニューオーリンズで生まれた。白人の楽団が、壊れた楽器を廃棄したところ、黒人たちがこれを拾って遊び始めた。やがて、見かねた白人が、黒人たちに楽譜の読み方を教えたとも言われています。 ニューオーリンズのジャズは、…

No. 221 第13章: ポピュラー音楽の潮流(その1)

文化は伝播し、融合することによって進化しますが、それがどのようなステップによるのか。この点を考えるには、音楽、特に人々の人気をビビッドに反映するポピュラー音楽を中心に考えると、分かり易いと思うのです。 この分野においては、世界中で、日々無数…

No. 220 第12章: 原始宗教と経典を持つ宗教

特に、狩猟採集を生業としていた時代(古代)と、農耕・牧畜を生業としていた時代(中世)の文化を語る上で、宗教の問題を避けて通る訳にはいきません。これらの時代において宗教は、いくつかの文化領域に関連を持たせ、それらの進化を促してきた経緯があり…

No. 219 第11章: 現在事実、記号、そして情報(その3)

思うに法律学というのは、過去の事実を見ている。例えば、殺人という事実が発生する。そんなことをしてはいけないということで、法律が作られ、殺人罪が規定される。かつて、そんな罪人はみんな死刑にしてしまえ、という考え方もあったのでしょうが、殺人事…

No. 218 第11章: 現在事実、記号、そして情報(その2)

人々の興味の対象は、過去の経験から、現在の事実へと移行している。このことは何を意味しているのか。一つには、科学技術が発達し、現在の事実を知ることができるようになった、ということがある。江戸時代には瓦版というのがあったそうですが、印刷技術が…

No. 217 第11章: 現在事実、記号、そして情報(その1)

文化領域論につきましては、当初から目次を公表し、第10章までは目次通りに掲載してまいりました。しかし、目次を作成してからそれなりの時間が経過し、私の心変わりも生じております。悩ましい所ではありますが、当初の目次通りに進めるより、少しでも充実…

No. 216 第10章: 文化総論(その2)

3.言葉と手 以前、記号系、競争系、身体系の3領域は、人間以外の動物にも共通するものだ、と述べました。すなわち、動物も記号を通じて外界を認識し、マウンティングを行い帰属集団の中で序列闘争を繰り広げ(競争系)、互いに毛繕いをするなどして親和的…

No. 215 第10章: 文化総論(その1)

1.経済の起源 本稿の第6章で“物質系”について述べましたが、その中の“機能”という項目が、やがて経済を生む。そして、“呪術”という項目が、科学につながっていく。そういう関係にあるのだろうと思うのです。項目を並べてみましょう。 <物質系>1. 機能…

No. 215 第9章: 心的領域論(その8)

(第9章は、前回の原稿で終了する予定でしたが、書き漏らしている事項がありましたので、本稿を追加することに致しました。それにしても、暑いですね!) 7.好奇心の射程 5つの心的な領域があって、各領域の間には壁がある。その壁をダイナミックに越え…

No. 214 第9章: 心的領域論(その7)

ゴーギャンの描く南海の孤島に生きる人々には、不思議な魅力を感じます。そして、その理由が、分かったような気がするのです。鍵は、ユングにあった。心理学者のユングと画家のゴーギャン。この2人には、共通点がある。ちなみに、ゴーギャンはユングよりも28…

No. 213 第9章: 心的領域論(その6)

6.ゴーギャン フランス人の画家のゴーギャン(Paul Gauguin, 1848-1903)が、どうも私の家に住み着いてしまったような、そんな気分です。当初は軽い気持ちで、ゴーギャンについて記載してみるつもりだったのですが、彼の作品や人生と向き合っているうちに…

No. 212 第9章: 心的領域論(その5)

5.閉鎖系の世界へ 分析心理学のユングは、アメリカのニューメキシコ州でプエブロ・インディアンに出会った。そこでユングは、初めて白人ではない人と話す機会を得たと述べている。(参考:ユング自伝2 ヤッフェ編 河合隼雄訳 みすず書房 1973)そして、イ…

No. 211 第9章: 心的領域論(その4)

4.環世界 「環世界」というのは、元々は生物学上の用語だと思われますが、文化人類学においても使用されることがあります。正確な定義はちょっと分かりませんが、概ね「特定の人間や人間集団の認識が及ぶ範囲の世界」という意味だと思います。 例えば、幼…

No. 210 第9章: 心的領域論(その3)

3.人生スゴロク ネットで、こんな話を読んだことがあります。ゴルフ三昧の生活が夢だったAさんは、定年退職を機にゴルフ場の近くに転居し、永年夢見ていた生活を始めた。ところが、半年もするとゴルフをするのが苦痛になってしまった。一方、Bさんの夢は釣…

No. 209 第9章: 心的領域論(その2)

引き続き、前回の原稿に添付致しました「文化とメンタリティの関係図」に基づき、検討してみます。 まず、芸術と各領域の関係は、次のようになっています。 身体系・・・音楽想像系・・・文学物質系・・・美術 やはり、競争系の芸術というものは、存在しない…

No. 208 第9章: 心的領域論(その1)

1.概略 経験がメンタリティを生み、メンタリティが文化を誕生させる。すると、メンタリティというものは目に見えないけれども、人間の行動や文化的遺産などを観察することによって、その特質を推し測ることが可能である。そして、文化に5つの領域があるの…

No. 207 第8章: 単一系の文化と複合系の文化

先日、YouTubeでアフリカの画像を見たのですが、これには驚きました。道端に100人位の人々が集まって、輪になっている。正面には数人の男たちが座っていて、ジャンベなどの打楽器を打ち鳴らしている。輪の中心は直径10メートル位の空白地帯になっていて、そ…

No. 206 第7章: 想像系

1.アニミズム まだ、文字を持つ前の人々には、分からないことだらけだった。例えば、地震、雷鳴、台風、日照りなどの自然現象が何故、起こるのか。それどころか、何故、一日には昼と夜があるのか。1年には何故、夏と冬があるのか。そして、人は何故死ぬの…

No. 205 第6章: 物質系

1.機能 私たちの生活の主たる部分は、“物”を利用することによって、成り立っています。物の機能を引き出す。食物などは、その代表例だと思います。肉や魚が持っている栄養分を、私たちは食べることによって吸収している。そして、物に機能を付与する。ボー…

No. 204 第5章: 身体系(その2)

3.打楽器とリズム 前回の原稿を書いた頃から、すっかり“和太鼓”に魅せられてしまいました。どうやら、和太鼓というのは、大木の幹をくり抜いて作るらしい。そして、牛皮を貼る。だから、金属が醸し出す硬質な音とは違って、深みのある優しい音が生まれる。…

No. 203 第5章: 身体系(その1)

1.“身体系”文化の起源 身体系の文化は、動物を真似る所から始まった。この点は、多分、間違いないと思います。今回調べてみて、祇園だとか浅草には鳥のサギの格好をして踊るという風習のあることが分かりました。動物の姿を真似て着飾る。動物の動きを真似…

No. 202 第4章: 競争系(その2)

“競争系”のメンタリティと、“競争系”が生み出す社会的な現象について、もう少し分解してみたいと思います。 3.恐怖型 人間は、他の動物よりも、強い恐怖心を持っていると言われています。秦の始皇帝が万里の長城を作らせたのも、恐怖心に原因がありました…