文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

ソクラテス

ソクラテスの魂(その9) あとがき

約3か月に渡って掲載してきた本シリーズを終わるに際して、雑駁にはなるが、これまで書き洩らしてきたこと述べたいと思う。 まず、歴史的な背景について。古代ギリシャにおいてもシャーマニズムが息づいていたことに、私は少なからず驚きを覚えた。洋の東西…

ソクラテスの魂(その8) 思想を持つということ

ソクラテスが登場する以前から、自然哲学と呼ばれる思想の試みがなされていたのであって、これはその後の自然科学へとつながったに違いない。ソクラテスもそれを学ぶが、やがて、決別する。つまり、哲学と自然科学の緊張関係は、その起源から始まっていたこ…

ソクラテスの魂(その7) 魂と知

まず、前回の原稿における私のミステイクについて、訂正すると共にお詫び申し上げなくてはならない。前回の原稿で私は、「ソクラテスの弁明」について、1回目の採決の後で、2回目の採決の直前に弁明がなされたのではないかと述べたが、これはとんでもない誤…

ソクラテスの魂(その6) 死に至る経緯

そもそも哲学の起源は、どうなっているのだろう。そう思って入門書を調べてみると、最初の哲学者は古代ギリシャのタレス(前624頃~546頃)だと記されている。タレスは「万物の大元(アルケー)は水である」と主張したという。その後、空気だとか火などがア…

ソクラテスの魂(その5) 希望としてのエクリチュール

それにしても、酷い世の中になった。コロナウイルスが蔓延しているからではない。疫病の流行は、何も、コロナが初めてのことではない。そうではなくて、政府の対策がことごとく失敗していることの方が、私にしてみれば、余程危機的だと思えるのだ。そもそも…

ソクラテスの魂(その4) 個別的な真理

身体は死滅しても、魂は死なない。だから、身体よりも魂の方が重要なのだ。ソクラテスはそう考えたので、自らの魂に忠実であろうとした。そして、死刑の評決に従って、毒の盛られた盃を飲み干して死んだのである。このようにショッキングな死に方をしなけれ…

ソクラテスの魂(その3)

結局人間は、互いに理解し合うことはできないのではないか。昔から「十人十色」などと言うが、それは1億2千万人(日本の人口)いれば1億2千万色になる訳で、同じ価値観を持つ人間は、2人といないに違いない。 例えば、水について研究してみれば、それは必ず…

ソクラテスの魂(その2)

名前だけなら、中学生でも知っているであろうソクラテス。私も、軽い気持ちでこの原稿に着手した訳だが、それは誤りだった。もちろん、ソクラテスの思想を現代人である私たちがそのままの形で受け入れることは困難だ。しかしその思想には、混迷を極める現代…

ソクラテスの魂(その1)

現在、日本はコロナ禍に見舞われ、その対策にことごとく失敗している。それにも関わらず、東京五輪を強行しようというのだから、呆れるという他はない。日本の民主主義は瀕死の状態だと言いたいところだが、冷静に考えてみると、この国において本当の意味で…