文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

2021-02-01から1ヶ月間の記事一覧

領域論(その14) 喪失領域

人間を集団で見た場合の5つの領域については、既に述べた。しかし、それだけではどうしても説明し切れない現象が、人間の世界には存在する。それを私は、「喪失領域」と呼ぶことにした。この領域においては、境界線というものが失われるのだ。善と悪、生と…

領域論(その13) 秩序領域

権力が、秩序をもたらす。そのことを端的に示すのが、この「秩序領域」である。 その外観に注目して、人間は植物図鑑を作った。そして、それぞれの機関が持っている機能に注目し、人間は動物図鑑を作った。そのようにして、ある総体を要素に分解することによ…

領域論(その12) 記号領域 / 奇妙な符号

領域論/主体が巡る7つの領域 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラクタ…

領域論(その11) 記号領域 / 主体を凌駕する記号

記号とは、音、光、形、色、物、人の表情、その他の要素によって構成され、対象を指し示すものであり、人の五感によって認知されるものである。 このように定義してみると、私たちが認知している全ての事柄が、記号であることになる。カントの純粋理性批判を…

領域論(その10) 認識領域 / 「知」を開示せよ

先の原稿で述べた通り、大和銀行ニューヨーク支店事件に関する判決で、最高裁は「リスク管理の大綱は、これを取締役会において決することを要す」と述べた訳だが、その際、最高裁の判事がどの程度、リスク管理について理解していたのか、私は、はなはだ疑問…

領域論(その9) 認識領域 / 国家の統治と企業の統治

原始領域と生存領域において、「知」は開示されない。それはむしろ、隠されることによって、一つの権力と結びついている。例えば、祭祀における「知」は、シャーマンが持っていたのだ。呪術においては、呪術師や占い師がその「知」を持っていた。神話におけ…

領域論(その8) 生存領域

原始領域は、人間が何らかの危機に瀕したときに生まれた領域だ。例えば、アイヌの歴史を考えた場合、彼らはかつて、精神的な危機に瀕したのだろうと思う。彼らは熊を重要な食糧源としていた。食べなければ、彼ら自身が飢えてしまう。しかし、殺すとき、熊は…

領域論(その7) 原始領域 / タイプーサム(Thaipusam)

ヒンドゥー教の聖地の1つが、マレーシアの首都、クアラルンプールの近くにある。バツーと呼ばれる巨大な洞窟がそれだ。その場所で年に1回、ヒンドゥー教の祭典が盛大に開催される。ネットで調べた断片的な情報をつなぎ合わせると、その概略は、概ね次のよう…

領域論(その6) 原始領域 / 文化の起源は祭祀にあり

現代においても、多くの人々が歌ったり、踊ったり、劇を演じたりしているというのに、人々は何故、その起源を考えないのだろう? その起源はもちろん、古代にある。本稿では、それを原始領域と呼び、その文化形態を祭祀とか呪術、若しくはシャーマニズムなど…

領域論(その5) 原始領域 / 内向する知

「真善美」という言葉があるが、思想が、私が、いや、もしかしたら私たちが目指しているのは、そういうことなのだろうか。真、善、美。これらの言葉はとても崇高で、気高く、毅然とした何かを表わしている。しかしそれらは、何処か遠い所にあるような気がし…

領域論(その4) 原始領域 / 祭祀、呪術、神話、そして個人崇拝

誠に恐縮ながら、少し、修正させていただきます。 この原始領域を説明するには、冒頭に記した通り、祭祀、呪術、神話、個人崇拝の4段階に分けて考えるのが良いのではないか。過去の原稿との重複を避けながら、説明させていただきたい。 祭祀の構成要素とし…

領域論(その3) 原始領域 / 呪術

呪術の本質は「物に願いを込めること」だと、かつて私は、このブログに書いたことがある。しかし、いくつかの事例に照らし合わせて考えてみて、そうではないことに気づいた。お詫びして訂正いたします。 呪術の本質は、「超越的因果関係論」にあるのではない…

領域論(その2) 原始領域 / 祭祀

現代社会について考えてみても、人類の歴史に思いを巡らせてみても、その基底部にはとても固く、不可思議な層のあることに気づく。今日においても人々は歌ったり、踊ったりすることを決して止めはしないし、宗教や芸術が何故存在しているのか、それを説明す…