謹んで、初春のお慶びを申し上げます。
さて、昨年末に駅前の蕎麦屋へ行ったのです。年末になるとあちこちのお店が休暇に入り、もう蕎麦屋くらいしか開いている所はなかった。ちょっと空腹気味だった私は「鍋焼きうどん」を注文したのですが、店員さんが怪訝な顔をしていました。辺りを見回すと確かに皆、蕎麦を食べている。そう、年越し蕎麦の日だったのです。しかし、今まで細く長く生きて来た私は、せめて余生だけでも太く短く生きたい。半分負け惜しみで、そう思ったのでした。皆様は是非、太く長く生きてください。
さて、新年早々、重たい話もいかがなものかと思い、今回は、情報リテラシーということについて考えてみます。鵜呑みにせず、自ら吟味した上で情報を受け止めよう、という話です。
皆様は、“初音ミク”ってご存知でしょうか。簡単に言えば、彼女はコンピュータグラフィックでできた、架空のアイドルなんです。ただ、その進化には凄まじいものがある。YouTubeで検索しますと、“初音ミク”のロサンジェルスでのコンサートがヒットする。バックのバンドは、人間がやっている。無数の観客が熱狂している。そして、コンサートホールの中央で、バーチャル・アイドルの“初音ミク”が歌い、踊る。多分、観客には3次元で見えているのだろうと思います。先進諸国の若者たちが、こういうものに熱狂する時代になった。バーチャルとリアルが競合し始めているとも言えそうです。それにしても、人間の認知・認識システムには根本的な欠陥があるのではないか、と思ってしまいます。
私の録画機には、古いものが沢山入っていて、先日、綾瀬はるかさん主演の「本能寺ホテル」という映画を見ました。現代の日本に実在する本能寺ホテルに、綾瀬さんが宿泊する。そこでエレベータに乗ると、織田信長が急襲される“本能寺の変”までタイムスリップするんです。そんなことは、あり得ない。私は、良識のある大人だ。そんなことに騙されるはずがない。そう思いつつ見ていたのですが、いつの間にか引き込まれてしまった。やはり、人間の認知・認識システムには、根本的な欠陥があるに違いない。
上の2つの例であれば、まだ、笑って話せます。しかし、地上波のテレビということになると、少し、事情が違ってきます。例えば、テレビ朝日の報道ステーションという番組があります。最近、この番組、政治に関するニュースをあまり放映しなくなりました。皆様も、そうお感じになりませんか? 古賀茂明さんの説明によると、何やらプロデューサーが代わって、番組制作の方針も変更されたそうなのです。偏差値70の視聴者を相手にする必要はない。あくまでも偏差値50の人を対象に視聴率を稼ぐ、というのが最近の方針だそうです。そして、政治に関するニュースは減り、事故や災害に関する報道が増えた。テレビ朝日というのは、元々は朝日新聞同様、政権に批判的な立場を取っていましたが、今は、違うようです。テレビ局も、少しずつ、経営が厳しくなっている。既にネットが普及し、BS放送も始まり、ケーブルテレビまである。結果、各番組の視聴率は下がる。そういう環境下にあって、背に腹は代えられない。社会的な正義よりも視聴率の方が大切だと考え、番組制作の方針が変わったとしても、無理はない。
新聞も同じ傾向にあるようです。発行部数は、下落傾向にある。他の企業と同じように、新聞社でも売上高の減少に比例して、人員を削減しているものと思われます。すると、個々の記事に関する掘り下げも、浅くなりがちになる。
雑誌も同じなんですね。ネットの普及率に反比例するように、発行部数が減り続けている。すると、各出版社の編集方針にも影響が出てくる。簡単に言うと、右の人たちが喜ぶような記事を掲載すると、雑誌は良く売れるんだそうです。基本的には、中国、韓国の悪口を書く。それに比べて、いかに日本が素晴らしいか。そういうことを強調した記事を掲載すると、売上が伸びる。あとは、朝日新聞の悪口。そんなところです。昨年、杉田水脈氏による「LGBTには生産性がない」という記事を掲載した新潮45という雑誌が休刊になりましたが、同誌の売り上げも相当減っていたそうです。売り上げが減る。利益が出ない。だから、読者が喜ぶような右寄りの記事を掲載する。世の中全体が、右傾化する。こういうパターンなんですね。
そこで、独立系のメディアというものが出て来た。これは、原則としてインターネットTVのようなもので、運営資金は、視聴者からの援助によって成り立っている。特定のスポンサーがいないから、特定の団体の利益を擁護する必要がない。また、政府からの干渉も受け難い。というか、政府の干渉など何するものぞ、という気概を持った人たちが運営している。これらもYouTubeで視聴できます。リベラル系で言えば、IWJ(Independent Web Journal)、Videonews.comなどがありますが、一番のお勧めは“デモクラシータイムス”です。ここにアクセスしますと、憲法学者の講義から最新ニュースの解説まで、幅広い情報が得られます。
ただ、別の深刻な問題もある。例えば、右寄りの人は、読売新聞を読み、正論とか諸君などの右寄りの雑誌を購読する。逆もまた真なりで、左の人は左寄りの情報ばかりに接する。すると、人々は左右に分断され、決して交わることがない。右の人は、そういうメンタリティで発言し、左の人はロジックで考える。これはもう、合意に至る可能性は、ほとんどないに等しい。
情報リテラシーを高めるためには、反対意見にも耳を傾けてみる必要があります。そういう観点で、たまにではありますが、私は右翼系の番組を視聴することがあります。独立系で“チャンネル桜”というのがありまして、ここは天皇中心主義で、生粋の右翼だと思いますが、最近、入管法(移民法)の改正案、種子法の廃止など、時折、安倍政権に対して批判的な立場を取っています。最近は、右翼の方の中にも辺野古の埋め立てに反対されている方もおられる。(厳密な意味では、既に、右とか左という区別自体が成り立たないのだと思います。私は、競争系のメンタリティと想像系のメンタリティが対立していると考えています。)
ところでこのブログでは、対米従属に反対する立場を取ってきましたが、対米従属の理由を解説した本がありました。日本は何故、いつまでたってもアメリカに従属しているのか、その理由を知りたい、という人にはお勧めです。私の既存の知識に照らして、この本に書いてあることには納得できました。
知ってはいけない
隠された日本支配の構造
矢部宏治
この国を動かす「本当のルール」とは?
私たちの未来を危うくする「9つの掟」の正体
講談社現代新書
840円(税別)
知ってはいけない2
日本の主権はこうして失われた
矢部宏治
アメリカによる支配はなぜつづくのか?
戦後日本の“最後の謎”に挑む!
講談社現代新書
880円(税別)
私は2冊とも読みましたが、まずはNo. 1の方をお読みになることをお勧め致します。著者の方、良くもまあここまで調べたものだと感心してしまいます。こういう本が何故、今頃出て来たかと言えば、それは日米両政府の情報公開によるところが大きいのだろうと思います。
ところで、このブログの次のシリーズ原稿ですが、現在、準備中です。やはり厳密に言えば、ルター派とプロテスタントとは異なる。近日中に、スタートしたいと思っています。では、本年もよろしくお願いいたします。