文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

文化認識論(その20) 記号から論理へ

最近、このブログの更新が滞っているにも関わらず、アクセス件数が増えています。不思議に思って、「アクセス先ページ」というところをクリックしてみますと、以下の2つの記事にアクセスが集中していることが分かりました。どちらもグーグルなどの検索エンジンで、ヒットするようになっているようです。

 

1つ目は、これ。

No. 159 文化進化論とは何か(その2)
http://ysatoshi.hatenadiary.jp/entry/2017/12/03/190446

 

「文化進化論」というアレックス・メスーディの文献に関する紹介記事がいくつかあって、その1つにこのブログの記事がリストアップされている。この本のサブタイトルは「ダーウィン進化論は文化を説明できるか」となっています。確かに魅力的なコピーです。しかし、私の意見としては、文化には5つの領域があり、進化論で説明できるものと、直線的に進歩するものとがある。例えば、ファッションだとか食品など、人々の好みによって選択されるものがあり、これらは進化する。他方、自動車の性能や時計の精度などは、確実に、直線的に進歩する。

 

この本、通読はしていませんが、私の「文化領域論」の方が優れているのではないか。我田引水で恐縮ですが、「文化とメンタリティの領域図 Version 2」を以下に添付しておきます。ちなみに、この図を円形で囲うと「曼荼羅」(マンダラ)のようになります。つまり、これは一つの世界観を示している。ユング精神疾患で苦しんでいる時期に、絵を描いていたそうで、それが後になって「曼荼羅」に近似していたことが分かったという話もあります。なお、この図では「記号系」の説明が欠落しています。いつか、Version 3を作りたいと思っています。

 

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アクセスが集中しているもう一つの記事は、次のものです。私がこれを書いたのは、このブログを始めた直後の2016年8月。現代人も、呪術に興味があるようです。そして、現代は古代に似ている。実は、そういう説もあるようです。この問題についての結論は、もう少し先送りしたいと思います。

 

No. 15 救済手段としての呪術
http://ysatoshi.hatenadiary.jp/entry/2016/08/04/202751

 

なお、このブログのボリュームですが、原稿用紙換算で3千枚を超えてしまいました。これは少し整理する必要がある。自分でも何を書いて、何を書いていないのか、分からなくなって来ました。そこで、ブログの右端の一番下になりますが「カテゴリー」を表示することにしました。まだ作業中ですが、ここをクリックすると関連する記事の一覧が表示されます。

 

ところで、新型肺炎の問題ですが、大変なことになってしまいました。

 

いつでも、私たちが最初に接するのは、記号です。例えば、ツイッターを通じて、現地の動画が配信される。例えば、人々が殺到する病院内の様子が動画に収められている。解説の文字を見る。武漢、病院、コロナウイルスなどの言葉に接する。そして、私は、その動画が映し出しているのが、新型肺炎に苦しむ現在の武漢の状況だと理解することができる。

 

すなわち、複数の記号によって、情報が構成されている。

 

いくつかの情報を検索するうちに、今度は、時間の経過に沿った因果関係を理解することになる。例えば、中国は春節で、多くの観光客が日本を訪れた。彼らを乗せたバスの運転手さんやガイドさんが、コロナウイルスに感染した。

 

他にも、こんな因果関係を知ることになる。武漢に在住している日本人を救出しなければならない。日本政府が動いた。専用機を飛ばして、国民を日本に連れ帰った。連れ帰った日本国民については、感染の有無を確認する必要がある。とりあえず、どこかに宿泊させなければならない。ところが、宿泊施設が不足し、数人の相部屋での宿泊となった。これでは、感染していない人まで、感染するリスクを負うことになる。そんな馬鹿な!

 

いくつかの因果関係を語るストーリーに接していると、そこから概念を抽出することができる。ウイルス、感染経路、隔離、治療、パンデミックなどの概念を知ることになります。

 

これらの概念を組み合わせると、そこに原理を発見することができる。例えば、今回のように人から人へ感染する場合、感染者を隔離しないと、ウイルスが伝播するという原理を発見することができる。現在、中国へ渡航すると、コロナウイルスに感染するリスクが高い、ということも原理だと思います。

 

複数の原理を組み合わせると、論理が生まれる。例えば、現在、日本政府が緊急に取り組むべき課題は、日本国内における感染の防止であり、パンデミックの阻止である。そのための方策として、中国からの渡航客を制限する必要がある。武漢から連れ帰った日本人については、早急に感染の有無を確認できるようなツールを確保する必要がある。何故ならば、日本国内でのパンデミックを絶対に阻止しなければならないからだ。

 

こうして、論理というものが生まれる訳です。何故、そう考えるのか、何故、そのように行動するのか。人がこれを説明できる唯一の手段は、論理だと思う訳です。人間が何かを認識するための最小単位の要素は、記号です。そして、人が論理に至ることのできる記号は、言葉しかない。私たちは、言葉と共にある。だから、もっと言葉を大切にしなければならない。

 

1. 記号
2. 情報
3. 因果関係
4. 概念
5. 原理
6. 論理

 

しばらく前の話ですが、国会で立憲民主党の杉尾議員が安倍総理を追及していました。すると安倍総理は自分の席から「共産党!」というヤジを飛ばしました。これは、上記の認識論からすると、杉尾議員の発言を安倍総理は情報として受け取った。そして、記号として「共産党!」という言葉を発したということになります。これでは、見知らぬ人を見てワンワンと吠える番犬と同じではないでしょうか。

 

私は、そのような人が日本の総理大臣を務めているという事実に直面し、とても悲しくなります。しかし、そのような人を総理大臣に選んでいる日本国民がいるということを考えますと、もっと悲しくなるのです。

 

上記の通り、私は、原理を発見することはできると考えています。換言すれば、私は近代主義者である、ということになるかも知れません。但し、これ以上。ポストモダニズムを批判する前に、彼らの意見も聞いてみたいと思っています。彼ら、すなわちポストモダニストの代表格は、ジャック・デリダではないでしょうか。そして、彼の代表作は「エクリチュールと差異」だと思います。とても難解でしょうけれども、読んでみたいと思っています。その結果は、また、このブログで報告させていただきます。