政治の世界において一般に言われるのは、右か左かという判断基準だろう。また最近は、左右の対立は関係ない、という意見もある。そうだろうか? 左右の対立は明らかに存在するし、しかしながら、それだけでは説明し切れない事象も存在する。むしろ、日本の政界においては3項対立が存在すると考えるべきだと思う。
個人の利益、すなわち人権を尊重しようとする立場がある。これがリベラルである。次に、国家の利益や国力を強化させようとする立場がある。これが保守。そして、リベラルでも保守でもなく、グローバルな経済秩序の中に身を委ねようとする立場もある。これがグローバリズム。この3つの勢力が、互いにぶつかり合っているのが、日本政界の現状だと思う。ちなみに、グローバリズムの頂点に君臨するのは、言うまでもなく米国である。従って、日本のグローバリズム勢力は、対米従属主義だと言って良い。
個人の利益 ・・・・・ リベラル
国力の強化 ・・・・・ 保守
世界の経済秩序 ・・・ グローバリズム
現在、日本の政界においてどの勢力が強いのかと言えば、それは圧倒的にグローバリズムなのだ。これは新自由主義と言い換えても良いのであって、具体的には自民党及びその衛星政党によって構成されている。
例えば田中角栄は、日中平和友好条約(1978年)を締結したのであって、自民党は昔からグローバリズム一色に汚染されていた訳ではない。では、グローバリズムや今日の対米従属主義は、いつ始まったのだろう。この点、多くの説があるだろうが、私は次の事実に注目し、それを1990年頃だと思う。
1985年: プラザ合意
1987年: 国鉄の分割民営化
1989年: 東西ドイツの統一
1989年: 消費税の導入
1991年: ソビエト連邦の崩壊
1991年: 日本のバブル崩壊
1995年: Windows 95発売
つまり、1990年頃には、東西冷戦構造が終わり、国際社会における米国の力が相対的に向上し、西側先進諸国においては需要不足による景気低迷が顕在化し、国の財産を民営化することによって、金融資本の利益増大を目論んだ時期なのである。
グローバリズムと言えば聞こえは良いかも知れないが、実質、そこから利益を得るのは一部の先進国だけなのだ。具体的には第二次世界大戦の戦勝国で、かつ、白人中心の国なのである。つまり米国、英国、フランスなどに限られる。
グローバリズムが世界を席巻すると、当然、反作用が生ずる。そこで、グローバリズムによって不利益を被る国々においては「民族主義ポピュリズム」が台頭する。こうして、グローバリズム対民族主義ポピュリズムという対決構図が生まれ、これが世界の政治課題となっている訳だ。日本も例外ではなく、近年、特に対米自立を標榜する保守派の活動が活発化している。
日本における対米自立の保守派と言えば、古くは三島由紀夫がいて、彼の思想を継承する一水会という団体があり、今日も政治活動を継続している。また、「チャンネル桜」というYouTube番組があって、保守派の論客が多く登場している。チャンネル桜の水島社長は、かつては安倍総理を支持していたが、現在は明白に反自民に舵を切っている。
グローバリズムに対抗するには、リベラリズムよりも保守の方が適しているのかも知れない。但し、反グローバリズムと日本の独立を目指す本物の国政政党は、現在、日本には存在していないと思う。自民党をはじめ、日本自民の会、立憲自民党、国民自民党などは、いずれも、米国に尻尾を振るグローバリスト集団に過ぎない。
核兵器を持たない日本が、軍事の面において米国から独立できるのか、という問題はある。それは、相当困難だと言わざるを得ない。しかし、日本に希望がない訳ではない。1つには、グローバリズムをけん引する米国自体の凋落がある。最早、米国には世界の警察としての役割を果たすだけの力は残っていない。トランプが大統領に再任されれば、米国及び米軍は、あちこちから手を引く可能性だってある。何しろ、トランプはAmerica firstなのだ。また、BRICsの台頭も見逃せない。世界の秩序が変わろうとしている。どう変わるのか、それは誰にも分からない。しかし、日本と日本人にとって、米国から独立するチャンスが到来するかも知れないのである。そのチャンスを逃さないために、まず日本人は現状をよく勉強しておいた方が良い。日本は米国に従属しているという現実を、直視しなければならない。次に、日本の経済を立て直す必要がある。具体的には消費税を廃止し、積極財政に舵を切るべきだ。その上で、米国からの独立を目指す前提で、軍事についての冷静な論議を始めることだ。他国に恐怖を与えないことを前提とし、例えば専守防衛を前面に出す形で、憲法9条を変えることも選択肢の1つだと思う。