文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

構造と自由(その9) 日本の権力構造

 

 

上の図に従って考えれば、権力の構造を説明することができる。まず、「知」があって、「知」が権力を生み出す。権力を生み出す主な「知」は、科学、宗教、その他の思想などを挙げることができる。そうやって生み出された国家レベルの権力は、軍事力、経済力、そして思想統制力とでも言うべき力に分類することができよう。米国は中国や途上国に対して法の支配、民主主義、人権尊重などの思想を常に押し付けようとしているが、これが思想統制力に当たる。

 

「知」・・・科学、宗教、その他の思想

権力 ・・・軍事力、経済力、思想統制

 

このように考えると、権力(者)、内部者、依存者が誰なのか、それを明らかにすれば権力の構造を明らかにすることができるのではないか。私は、日本という国家をベースにした場合、概略、以下のように考える。

 

権力者・・・米国

内部者・・・官僚組織

依存者・・・自民党

 

<権力者としての米国>

 

そもそも、日本は独立国なのか、という問題がある。形式的に言えば、日本はもちろん独立国だ。国連も認めているし、日本には憲法がある。しかし、実質的に言えば、日本は米国の従属国なのだと思う。憲法の歴史を振り返ってみよう。

 

日本国憲法は、GHQマッカーサーの主導により、制定された。マッカーサーの日本に対する統治方針は、「貧しくて、戦争のできない国」にすることだった。しかし、日本国憲法が施行された1947年、その直後に米国の統治方針は変更される。中国やソ連などの共産主義国の台頭に対抗するため、米国は日本を「豊かで戦争のできる国」にしようと考えた。この方針変更は、一般に「逆コース」と呼ばれている。そして日本は、経済的に豊かな国になった。すると米国は日本に対する統治方針を「貧しくて戦争のできる国」に変更したのである。これは、1980年代に起こった変化だった。厳密にそれがどの年に発生したのか、私はそれを知らない。1985年のプラザ合意が、その契機だったのかも知れない。プラザ合意以降の日米関係を以下に記す。

 

1985 ・・・ プラザ合意。円安が批判され、日本の輸出が打撃を受ける。

1986 ・・・ 日米半導体協議。日本の半導体産業が打撃を受ける。

1990 ・・・ 日米構造協議。日本の市場開放が求められる。

1995 ・・・ 日米自動車協議。日本車の対米輸出が批判される。

 

  • 日米半導体協議に関する参考動画

世界シェア49%から6%に急降下!日本が半導体戦争で負けた原因は○○首相が飲んだありえない条件【よりぬきポリタスTV】《渋谷和宏》 - YouTube

 

このように1980年代以降、米国は圧倒的な軍事力を背景に、日本の経済的な発展を一貫して妨害してきたのである。米国による妨害がなければ、今日の日本は、今よりも格段に豊かになっていたに違いない。米国は明らかに日本の貧困化を目指している。そんな米国に従属しているのだから、日本人が豊かになるはずがない。つらいことではあるが、日本人は、まずこの事実を認識すべきなのだ。

 

<内部者としての官僚組織>

 

憲法68条に従い、国務大臣過半数は国会議員の中から選ばれる。総理大臣が組閣をすると何人かの国会議員が大臣となり、行政機関のトップの座に就く。そもそも憲法国民主権を謳っているので、一番の権力者は国民であって、国民に近い順に大きな権力を持つように設計されている。権力の順序は、「国民>政治家>官僚」となっているのだ。つまり、選挙によって国民から選任される国会議員は、当然、官僚より強い権力を持つ。

 

しかし、私は上記の点についても疑義を抱いている。外務省を例に考えてみよう。そもそも世界には、日本を除いて、195もの国がある。そして、その大半の国々と日本は何らかの関係を持っている。もちろん、歴史的な経緯もある。その全てを1人の外務大臣が認識することなど不可能だ。その全てを何らかの形で知り得ているのは、膨大な数の役人を抱える外務省という官僚組織に他ならない。つまり、「知」を保有しているのは、政治家ではなく官僚の側なのである。

 

実際、多くの政策や法案を作っているのも、政治家ではなく、官僚組織なのだと思う。また、政権交代があると政治家は入れ替わるが、官僚の方は、一向に代わることがない。

 

このように考えると、官僚組織が実質的に握っている権力の大きさが分かる。そして、この官僚組織の首根っこを押さえているは、米国である可能性がある。日米合同委員会は、米軍と日本の官僚によって構成され、政治家は出席を許されていない。議事録が公表されることはないので、一体、どの範囲の事柄が審議されているのか、知る術はない。少なくとも日本の防衛に関する事項は、この場で決まっているのだろう。しかし、それ以外の事柄についても、日本の官僚組織は米国から命令されているのではないか?

 

例えば、コロナのワクチン。日本は米国製のワクチンを大量に購入し、国民に対しそれらを摂取することを強く推奨した。こういう時に限って、予算の話は出て来ない。一体、日本はどれだけの税金をワクチンに投入したのだろう。そして、最近はワクチンの話を一向に聞かなくなったが、その理由は何だろう? 日本の塩野義製薬が飲み薬を開発したとの情報があるが、それらが日本の薬局で販売されていないのは何故だろう?

 

日本の政府は、外国に対してはODAなど様々な名目で湯水のように援助金を交付するが、国内に対しては増税を繰り返す。何故だろう?

 

このような疑問は枚挙にいとまがないが、日本の官僚組織が何らかの形で、米国から指示を受けていると考えれば、疑問は解消する。

 

<従属者としての自民党

 

自民党に所属している全ての議員に該当するとまで言うつもりはないが、傾向として言えば、彼らに思想があるとは思えない。彼らが目指しているのは、現状維持であって、米国に従属し続けることに他ならない。一見、新しいことにチャレンジしているように見える事柄もあるが、それらには概ね、利権が絡んでいる。東京オリンピックもそうだったし、マイナンバーカードの導入と保険証の廃止問題に関しては、ITゼネコンと呼ばれる業界の大手企業が、自民党に多額の献金を行っているという情報もある。

 

多少の例外はあるかも知れないが、自民党は米国の指示は積極的受け入れる。日本の防衛費倍増問題については、バイデンが岸田に指示したのだ。そうバイデンが口を滑らせ、その後、日本政府とバイデン自身が訂正したようだが、どう考えてもバイデンの指示を岸田が受け入れたとしか思えない。日本政府はトマホークとか言う時代錯誤のミサイルを400発も米国から購入するそうだが、そんなポンコツを押し付けられて、さぞかし自衛隊も困っているだろう。

 

思うに、自民党というのは米国や官僚組織からしてみると、都合の良い選挙要員なのだと思う。ひたすら面倒な選挙活動というものをやらせておく。但し、実質的な意思決定は、決して任せない。消費税を始め、無数の増税を推進しているのは財務省で、自民党財務省の言いなりになっているに違いない。

 

私がここで自民党と言っているのは、象徴的な意味なのであって、本質的に言えば、維新の会や立憲民主党(主流派)にも同じことが言える。

 

このような自民党が何故、選挙に強いかと言えば、それは利権や既得権の維持を求める他の依存者が、シャカリキになって応援するからだ。大企業は多額の献金を行い、見返りを求めるだろうし、宗教団体も同じである。宗教法人としての認可を得れば、納税義務が免除される。実際、未だに統一教会に対する解散命令は、発出されていない。

 

メディアに関して言えば、クロスオーナーシップという問題がある。簡単に言うと、地上波のテレビの数には限度がある。それは電波の周波数に限りがあるということに由来している。これを公開入札に掛ければ、莫大な金額で売却することが可能となる。しかし、既存の地上波のテレビ局は、それぞれ格安でこの権利を持っているらしい。公開入札に掛けられると困るので、そもそも、地上波のテレビは権力に対してモノが言えない。従って、先進諸国においては、テレビと新聞の株主は分離すべきだという考え方が浸透し、実際、そのように制度が設計されている。言うまでもなく、テレビと新聞の株主が同一人物だった場合、新聞まで権力を監視する力が弱体化されるからである。日本はどうかと言うと、皆様ご存じの通り、このクロスオーナーシップがまかり通っているのだ。

 

米国、官僚、自民党。この権力のトライアングルによって、日本には権力の網の目が蜘蛛の巣のように張り巡らされているのだ。そして、この権力の構造は、仮に政権が交代したとしても、崩れる気配がないのである。

 

但し、グローバルな情勢に眼を転ずると、状況は一変する。米国の凋落である。ウクライナ戦争の先行きも、一向に見えて来ない。最早、世界の秩序は、急速に流動化しているに違いない。