文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

反逆のテクノロジー(その26) 「知」を開くリスクマネジメント

今日、東京都におけるコロナ新規感染者は、822人に達した。日本における累計の死者数は2千768人に及ぶ。(NHK調べ) その他にもコロナ不況に伴う解雇や雇止めが広がり、経済的な理由から自殺する人も急増している。大変な時代になった。これはもう、生きているだけで勲章ものだと思う。

 

未だに「コロナは風邪と同じ」だと思っている人もいるようだが、とんでもない。コロナの場合、死に至らなくても重篤な後遺症を誘発するリスクがある。また、コロナは変異を繰り返している。当初のものは「武漢型」と呼ばれ、その後、「東京・埼玉型」、「欧米型」と変異を遂げた。現在、欧米で流行しているものの正体は不明だが、最近、イギリスで更に新しいものが蔓延し始めているらしい。

 

ちなみに、アメリカにおけるコロナによる死者数は30万人を超えた。ざっと数えて、日本の100倍である。日本では何故、死亡率が低いのか。その理由は分かっていない。仮に、ファクターXと呼ばれている。理由が分かっていないのだから、ファクターXが変異を遂げた新型のコロナに対しても有効なのか、それは誰にも分からないのだ。だったら、外国人の流入を防ぐべきだと思うのは、私だけではないだろう。

 

政府の無為無策にはあきれるばかりだ。当然、政府に対する支持率は、急落している。毎日新聞世論調査によれば支持率が40%で、不支持率は49%だった。最近は、政府寄りと思われるメディアも、公然と菅政権を批判し始めている。自民党内部でも、非難の声が上がり始めている。してみると、菅総理は来年秋の任期満了まではもたないのではないか。自民党菅総理を引き摺りおろし、首をすげ替えて総選挙。そういうシナリオではないだろうか。

 

それにしても、日本政府は何故、対策を講じないのだろう。医療の最前線で戦っている医師や看護師の方々に対して。経済的に困窮している人々に対して。そもそも、国民のことなど考えていないのだろうか。それもあるだろう。日本政府は無能なのか。それもあるに違いない。しかし、それだけではないように思う。もっと、根本的な原因がある。

 

そもそもリスクマネジメントは、過去の体制を批判するという特色を持っている。ある時代の体制側の人間集団というものがあって、彼らが、例えばビルを建設する。その後、大地震がやって来て、そのビルが倒壊する。調べてみると、手抜き工事だったことが分かる。すると、過去の体制側の人間が非難されることになる。

 

また、リスクマネジメントは、権力構造の変化を誘発する力を持っている。だから権力者は、これに消極的になるのだ。現在、私たちが直面しているコロナ禍について、私たちは陰気な顔をした総理大臣の意見を聞きたいと思っているだろうか。それよりも、疫病対策に関する専門家の意見に耳を傾けたいと思っているに違いない。有能な専門家がいれば、その人を厚生労働大臣に任命すべきだ、という意見だって出てくるだろう。現状維持を目的とする権力者は、これを嫌がっているに違いない。

 

権力者がリスクマネジメントを嫌う理由は、もう1つある。それは、権力者だけが持っていた「知」なり情報が開示されることだ。これを嫌がっているに違いない。私など、昨年までは厚生労働行政などというものに興味を持ったことはなかった。しかし、コロナ禍が発生してからは、保健所や病院の数はどうなっているのか、医師や看護師に対する支援体制はどうなっているのか、そういうことに興味を持ち始めた訳だ。そういうことが今、国家単位で起こっているに違いない。大阪では維新が保健所などの統廃合を進めてきたらしい。厚労省は、病床の削減計画を進めているらしい。おいおい、それは反対だろう。病床を増やせ! 

 

また、コロナ対策の場合は、全国民に協力を求める必要がある訳で、その際、何故、そのような要請を出すのか、政府なり行政機関は説明しなければならない。その時、政府などが持っている情報が、開示される。すなわち、リスクマネジメントに取り組むということは、必然的に「知」を開くことになる。

 

すなわちリスクマネジメントは・・・

 

・過去の体制を批判する。

・権力構造を変えようとする。

・「知」を開く。

 

すなわち、リスクマネジメントとは、権力に対し反逆を試みる理論的な体系なのである。

 

なお、行政が頼りにならない現状に鑑み、私たちは、自らの身を守る必要がある。1つの方法としては、想像力を働かせ、因果関係を考えることではないか。どのような感染経路があるのか、それぞれの感染経路に対してどのような予防措置が可能なのか、感染してしまった場合に取るべき行動は何か。そのような事柄を考えておいた方が良い。全てのリスクを除外することはできない。では、自分が負うことのできるリスクが何で、自分としては決して負担することのできないリスクは何なのか。年末年始をどう過ごすか。

 

コロナの問題は新しい段階に入りつつあり、最後は個々人の想像力と判断によるのではないか。いずれにせよ、近い将来、ワクチンの問題に直面するだろう。ワクチンを接種するのか、しないのか。アメリカで使用されたワクチン、ツイッター上では既に重篤な副作用が報告されている。