文化認識論

(世界を記述する。Since July 2016)

領域論(その12) 記号領域 / 奇妙な符号

領域論/主体が巡る7つの領域 原始領域・・・祭祀、呪術、神話、個人崇拝、動物 生存領域・・・自然、生活、伝統、娯楽、共同体、パロール 認識領域・・・哲学、憲法、論理、説明責任、エクリチュール 記号領域・・・自然科学、経済、ブランド、キャラクタ…

領域論(その11) 記号領域 / 主体を凌駕する記号

記号とは、音、光、形、色、物、人の表情、その他の要素によって構成され、対象を指し示すものであり、人の五感によって認知されるものである。 このように定義してみると、私たちが認知している全ての事柄が、記号であることになる。カントの純粋理性批判を…

領域論(その10) 認識領域 / 「知」を開示せよ

先の原稿で述べた通り、大和銀行ニューヨーク支店事件に関する判決で、最高裁は「リスク管理の大綱は、これを取締役会において決することを要す」と述べた訳だが、その際、最高裁の判事がどの程度、リスク管理について理解していたのか、私は、はなはだ疑問…

領域論(その9) 認識領域 / 国家の統治と企業の統治

原始領域と生存領域において、「知」は開示されない。それはむしろ、隠されることによって、一つの権力と結びついている。例えば、祭祀における「知」は、シャーマンが持っていたのだ。呪術においては、呪術師や占い師がその「知」を持っていた。神話におけ…

領域論(その8) 生存領域

原始領域は、人間が何らかの危機に瀕したときに生まれた領域だ。例えば、アイヌの歴史を考えた場合、彼らはかつて、精神的な危機に瀕したのだろうと思う。彼らは熊を重要な食糧源としていた。食べなければ、彼ら自身が飢えてしまう。しかし、殺すとき、熊は…

領域論(その7) 原始領域 / タイプーサム(Thaipusam)

ヒンドゥー教の聖地の1つが、マレーシアの首都、クアラルンプールの近くにある。バツーと呼ばれる巨大な洞窟がそれだ。その場所で年に1回、ヒンドゥー教の祭典が盛大に開催される。ネットで調べた断片的な情報をつなぎ合わせると、その概略は、概ね次のよう…

領域論(その6) 原始領域 / 文化の起源は祭祀にあり

現代においても、多くの人々が歌ったり、踊ったり、劇を演じたりしているというのに、人々は何故、その起源を考えないのだろう? その起源はもちろん、古代にある。本稿では、それを原始領域と呼び、その文化形態を祭祀とか呪術、若しくはシャーマニズムなど…

領域論(その5) 原始領域 / 内向する知

「真善美」という言葉があるが、思想が、私が、いや、もしかしたら私たちが目指しているのは、そういうことなのだろうか。真、善、美。これらの言葉はとても崇高で、気高く、毅然とした何かを表わしている。しかしそれらは、何処か遠い所にあるような気がし…

領域論(その4) 原始領域 / 祭祀、呪術、神話、そして個人崇拝

誠に恐縮ながら、少し、修正させていただきます。 この原始領域を説明するには、冒頭に記した通り、祭祀、呪術、神話、個人崇拝の4段階に分けて考えるのが良いのではないか。過去の原稿との重複を避けながら、説明させていただきたい。 祭祀の構成要素とし…

領域論(その3) 原始領域 / 呪術

呪術の本質は「物に願いを込めること」だと、かつて私は、このブログに書いたことがある。しかし、いくつかの事例に照らし合わせて考えてみて、そうではないことに気づいた。お詫びして訂正いたします。 呪術の本質は、「超越的因果関係論」にあるのではない…

領域論(その2) 原始領域 / 祭祀

現代社会について考えてみても、人類の歴史に思いを巡らせてみても、その基底部にはとても固く、不可思議な層のあることに気づく。今日においても人々は歌ったり、踊ったりすることを決して止めはしないし、宗教や芸術が何故存在しているのか、それを説明す…

領域論 - 主体が巡る7つの領域 - (その1) はじめに

現在、私たちの文明は、危機に瀕していると思う。コロナウイルスの問題もそうだが、そればかりではない。政治の危機という問題もある。原則として、政治家は選挙によって選ばれているのだから、政治の危機を引き起こしているのは、主権者である国民の民度の…

反逆のテクノロジー(その28) 自己への配慮

自己への配慮とは・・・ - 単に自分の地位においてだけではなく、理性的存在として自分自身を尊重することの重要性である。(中略)自己を自己の行為の主体として構成する際の手がかりとしての自己への関係の強化 (P.57)- であり、 - 配慮すべきは自分…

反逆のテクノロジー(その27) 快楽の活用

ミシェル・フーコーの遺作となった「性の歴史」は3部作となっており、今回取り上げるのは、2番目の作品である。 性の歴史I 知への意志 性の歴史II 快楽の活用 ・・・今回はコレ 性の歴史III 自己への配慮 物事には、因果関係というものがある。原因があって…

コロナと自然科学

結局、現在、コロナウイルスがどのようなメカニズムによって感染しているのか、誰にも分かっていないのではないか。 基本的なことを言えば、1)飛沫感染、2)物を経由した感染、3)空気感染 の3種類があると思う訳だが、現在の主流は「空気感染」にあるの…

コロナが襲った呪術の国

昨日、東京都の感染者数は1591人で、全国ベースでは約6千人だった。メディアもこの話題で持ち切りだが、私にはいくつかの不満がある。 まず、感染の原理についての解説が少ないことだ。素人ながら思うに、人間の発声、咳、くしゃみなどによって飛沫が拡散し…

宇宙、生命、人間、そして文化

宇宙の成り立ちについて、何かの本で読んだ話はこうだった。 まず、点があった。その点の中には、全宇宙を構成する質量とエネルギーが存在していた。どこにあったのか。それは、言えない。何故なら、未だ、空間が存在していなかったのだから。いつからあった…

この世は宴

人生とは、路上のカクテルパーティーである。 ミック・ジャガーは「シャタード」という曲の中で、そう歌った。(Life is a cocktail party on the street.) なるほど、うまいことを言うものだ。人間は無から生まれ、無に帰ってゆく。その間、無数の人々と出…

日本のシステム

この国に生まれ落ちると、まず、届け出に基づき戸籍が作成される。日本の戸籍制度は、多分、世界的に見ても例を見ない程、精度が高い。官僚の几帳面さがそうさせるのか、それとも家系にこだわるという半ば宗教的な価値観がそうさせているに違いない。やがて…

反逆のテクノロジー(その26) 「知」を開くリスクマネジメント

今日、東京都におけるコロナ新規感染者は、822人に達した。日本における累計の死者数は2千768人に及ぶ。(NHK調べ) その他にもコロナ不況に伴う解雇や雇止めが広がり、経済的な理由から自殺する人も急増している。大変な時代になった。これはもう、生きてい…

ジョンの人生

昨日は、ジョン・レノンの命日ということもあって、ジョンに関するいくつかの記事や写真がブログやツイッターに掲載された。つらつらとジョンについて考えていると思い当たることがあって、この記事を書くことにした。 思うに、人間が生きている世界を単純化…

反逆のテクノロジー(その25) 想像力と科学

哲学とは何かという大問題がある訳だが、初心者向けの説明として「神話に準拠しない思考方法」が哲学だと言われている。してみると、歴史的に人間の思考方法には「神話に準拠するもの」と「哲学的なもの」の2つがあることになる。 「神話に準拠する思考方法…

反逆のテクノロジー(その24) 中間的なまとめ

少し、本原稿の主眼なり、途中経過をまとめてみたいと思う。 現在、私はとても不安だし、社会に対する不満も抱えている。私は高齢者なので、コロナだって怖い。そもそも人間の体にはガン細胞が巣くっているのであって、この年まで生きてくると、ガンで死ぬの…

反逆のテクノロジー(その23) 美を扱う技術

美とは何か、という問題を主に考え続けてきたのは、文学者ではないだろうか。例えば、三島由紀夫も美について考えた作家の1人である。彼のギリシャ彫刻趣味や、ボディービルで肉体を鍛え上げるという発想には辟易するが、ただ、滅びゆくものこそが美である、…

反逆のテクノロジー(その22) 言語の領域

言葉というのは、とても不便なものだと思う。もし尋ねられれば、私は「民主主義を支持している」と答えるだろう。しかし、100%そうかと言えば、それは違う。独裁よりはいい。それは確かだ。しかし、愚かで騙されやすい大衆の意向を尊重するのが民主主義であ…

反逆のテクノロジー(その21) アカデミズムの正体

一般大衆がその時代の「知」に近づこうとすると、若しくは「知」について発言しようとすると、これを妨げようとする力が働くような気がしてならない。実際、れいわ新選組の山本太郎氏が街頭で演説をしていたときに「偉そうなことを言うな!」というヤジが飛…

反逆のテクノロジー(その20) 狂気と向き合う技術

20世紀の前半、アメリカに住む黒人たちにとって「トレイン」は様々な意味を持っていたに違いない。乗車賃だって高額だっただろうし、「トレイン」に乗るということは、長距離の移動を意味していた。ロバート・ジョンソンが歌う“Love in Vain”のように、恋人…

反逆のテクノロジー(その19) 権力に対抗する技術

ミシェル・フーコーの著作「知への意志」に、次の一節が記されている。 - 一方には、性愛の術を備えた社会があり、しかも、中国、日本、インド、ローマ、回教圏アラブ社会など、その数は多かった。(中略)それが秘せられねばならぬのは、その対象が汚らわ…

反逆のテクノロジー(その18) 言語化するということ

フーコーは、性に関する事項を自ら告白するという文化は、キリスト教のカトリックに由来すると説明している。カトリックには「キリスト教司教要綱」というものがあって、これに定められた「告解」という手続きに従って、信者たちは自ら犯してしまった罪につ…

反逆のテクノロジー(その17) 知への意志

表題の「知への意志」とは、ミシェル・フーコーの連作、「性の歴史」第1巻のタイトルである。「性の歴史」は当初、全5巻となることが予定されていたが、その3巻までが出版された時点で、フーコーは他界した。タイトルを並べてみよう。 性の歴史 I 知への意志…